ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

大森望・編「NOVA 2023年夏号」

NOVA 2023年夏号 (河出文庫) 河出書房新社 Amazon NOVA初というか日本初の「女性作家だけによるSFアンソロジー」となる今回。前巻の感想はこちらに。今回はもう少し丁寧に1作ごとに見て行こうと思います abogard.hatenadiary.jp ・池澤春菜「あるいは脂肪で…

秋田麻早子「絵を見る技術」

絵を見る技術 名画の構造を読み解く 作者:秋田 麻早子 朝日出版社 Amazon SAKさんのところで知った一冊。詳しい内容はそちらを参照してください(また丸投げか!) sakstyle.hatenadiary.jp 絵の見方、解析の手法について説いた内容です。視線の誘導や画角、…

モーリス・ドリュオン「みどりのゆび」

みどりのゆび (岩波少年文庫) 作者:モーリス ドリュオン 岩波書店 Amazon これもまた岩波少年文庫で長く愛されている名作。おとぎばなし、幻想、絵空事、夢、希望、たぶんそういったことが濃縮されているタイプのファンタジーなんだろうなあ。あとがきにある…

いぬいとみこ「ながいながいペンギンの話」

ながいながいペンギンの話 (岩波少年文庫) 作者:いぬい とみこ 岩波書店 Amazon 動物が人間と同様の価値観や思考方法を持つかどうかは極めて疑問なことだけれど、ファンタジー小説に於いてはその限りではない。洋の東西を問わず動物文学は昔からファンタジー…

福永武彦「古事記物語」

古事記物語 (岩波少年文庫 508) 作者:福永 武彦 岩波書店 Amazon ファンタジーというか神話なんですが、「物語」と題されてるしまあファンタジー小説というカテゴリにしておこう。ちょっと児童文学を読みたくなって、あと池澤文筆一族初代の本って読んだこと…

「グリッドマンユニバース」見てきました。

公式。ただしくお祭り映画でした。TVシリーズのファンだったら(電光超人時代からのファンだったら尚更)いますぐシアターにアクセスフラッシュしてバトルゴーです! あと、これはネタバレなんですが

川村拓「事情を知らない転校生がグイグイくる。」⑭

事情を知らない転校生がグイグイくる。 14巻 (デジタル版ガンガンコミックスJOKER) 作者:川村拓 スクウェア・エニックス Amazon 順当に皆のリア充化が加速する夏休みの終わりと2学期の始まり。半年先には卒業を控えて、では全員が全員幸福を手に入れられるの…

若菜晃子編著「岩波少年文庫のあゆみ」

岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020 (岩波少年文庫, 別冊2) 作者:若菜 晃子 岩波書店 Amazon カテゴリーに困るけれど、岩波少年文庫創刊70周年を記念して刊行された、いわばガイドブックで、史料的価値の高いものではあります。この分野にはさすがに疎くて本棚…

「シン・仮面ライダー」見てきました。

公式。 いやーよかった。実によかった。ゴジラ、エヴァ、ウルトラマンと良作続きだったのでハードル高めな気持ちでいたんだけれど、まったく期待を裏切られることなくそれ以上に楽しみ、興奮し、高揚してきました。 以下ネタバレね

ドナルド・E・ウェストレイク「さらば、シェヘラザード」

さらば、シェヘラザード (ドーキー・アーカイヴ) 作者:ドナルド・E・ウェストレイク 国書刊行会 Amazon ミステリーのタグつけたけれど、別にこれはミステリー小説ではなくて、普通小説です。訳者あとがきにもそう書いてある。 どこが普通の小説だよ(´・ω・`)…

伊藤典夫・編訳「吸血鬼は夜恋をする」

吸血鬼は夜恋をする: SF&ファンタジイ・ショートショート傑作選 (創元SF文庫) 作者:ヤング、マシスン他 東京創元社 Amazon 当初タイトルからホラーSFの作品集かと思ったけれど実際には副題にもあるように「SF&ファンタジィ・ショートショート傑作選」であ…

ダシール・ハメット「影なき男」

影なき男 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:ダシール ハメット 早川書房 Amazon これは本当に読んでなかった一冊。読んでみるもんですね、ハメットがこんな作品書いていたとは知らなかった。主人公は探偵ではなく、結婚した妻の実家が太すぎて既に引退し実業家…

ダシール・ハメット「デイン家の呪い」

デイン家の呪い(新訳版) 作者:ダシール ハメット 早川書房 Amazon 古典の割には読んでなかったなーへーなかなかおもしろいなーと読み進めてクライマックスではたと気がつく。俺この本前に読んでるな(´・ω・`) とはいえ感想も書かずに忘れていたので一応記…

光原百合「扉守」

扉守(とびらもり) 作者:光原 百合 文藝春秋 Amazon 現代日本瀬戸内海に面した架空の街(尾道がモチーフ)「潮ノ道」を舞台に、そこで起きる小さな、少し幻想的な出来事を綴る連作短編集。持副寺の住職了斎なる人物が毎回登場するキャラクターではあるけれど…

渡辺清「戦艦武蔵のさいご」

戦艦武蔵のさいご (ノンフィクション・ブックス) 作者:渡辺 清 童心社 Amazon ツイッターで何人かのフォロワーさんが話題にされていて、そういえば自分も子供の頃に読んで結構な印象を受けたなあと懐かしくなる。幸い図書館の書庫にあったので借りてきました…

H・P・ラヴクラフト「アウトサイダー」

アウトサイダー―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫) 作者:H・P・ラヴクラフト 新潮社 Amazon 新潮文庫の南條竹則新訳によるクトゥルー神話傑作選第三巻。既存の2冊の感想はこちらに。 abogard.hatenadiary.jp abogard.hatenadiary.jp 今回は表題作のほか「銀…

神林長平「アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風」

アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風 作者:神林 長平 早川書房 Amazon 我、読めり。 …えっこれじゃダメですか感想としてならこの6文字ですべて言い尽くしてるんですがそうですかダメですか。(・ε・)チェー しかし実際、シリーズ4巻ということで好きな人はもう読んで…

小沼丹「古い画の家」

小沼丹推理短篇集-古い画の家 (中公文庫 お 99-1) 作者:小沼 丹 中央公論新社 Amazon 「黒いハンカチ」は昔から本棚に在って、前に随筆も一冊読んでいた*1小沼丹の作品集。雑誌「宝石」に発表された作品などを中心に、おおむね1950年代後半~60年代前半に執…

大森望編「ベストSF2022」

ベストSF2022 (竹書房文庫 お 6-3) 竹書房 Amazon 竹書房の短編年間ベストSFアンソロジー第3巻ということで、シリーズ既刊の感想リンクを先に貼っておきます。 abogard.hatenadiary.jp abogard.hatenadiary.jp それでまず苦言を呈しておくと本書の帯には「ま…

デイヴィット・ウェリントン「最後の宇宙飛行士」

最後の宇宙飛行士 (ハヤカワ文庫SF) 作者:デイヴィッド ウェリントン 早川書房 Amazon 正直言っていまひとつだった。あんまりそういうものの感想は書かないことにしているのだけれど、これについては記録しておこうと思う。カバー解説には「名作『宇宙のラン…

ドナルド・E・ウェストレイク「ギャンブラーが多すぎる」

ギャンブラーが多すぎる (新潮文庫) 作者:ドナルド・E・ウェストレイク 新潮社 Amazon ウェストレイクを初めて読んだのは今は亡きミステリアス・プレス文庫のオレンジ背で「踊る黄金像」でした。陽気で明るいNYの雰囲気を前面に出した楽しいクライム・コメデ…

佐藤亜紀「喜べ、幸いなる魂よ」

喜べ、幸いなる魂よ (角川書店単行本) 作者:佐藤 亜紀 KADOKAWA Amazon やあ面白かった、これはよかった。大蟻喰先生相変わらず冴えわたる。18世紀フランドル地方の商人一族というか商人一族になった男の一代記か。なんていうと時代小説なんだけれど、ここに…

今年の一番について考える。

毎年恒例の…ですが、その前に。 プーチンは直ちに戦争を止めて罪に服せ。 清水寺の坊主が金で雇われてどんな漢字を書こうと関係ないけれど、今年はプーチン戦争のおかげでいろんなものが台無しになった気がする。この変化は不可逆で、進む先に良いことは無い…

池澤春菜「SFのSは、ステキのS+」

SFのSは、ステキのS+ 作者:池澤 春菜 早川書房 Amazon 池澤春菜の中にはヒトが入っている。それは池澤春菜という名前で、池澤春菜をやっている。これはきっとそういう本だ。前作より6年、初出は書いてないけど連載51回から100回までになるのかな?前作…

土屋健「機能獲得の進化史」

機能獲得の進化史 作者:土屋健 みすず書房 Amazon サブタイトルを『化石に見る「眼・顎・翼・あし」の誕生」とし、全体のテーマを「攻撃と防御」「遠隔検知」「あし」「飛行」「愛情」の5つに章立て、それぞれのパートでそれぞれの機能を有するエポックな古…

アンシア・シモンズ「ライトニング・メアリ」

ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女 作者:アンシア・シモンズ,カシワイ 岩波書店 Amazon 伝記というより伝記小説。メアリ・アニングの本を読むのは3冊目だけれどあーちなみに前読んだのはこれね。 abogard.hatenadiary.jp abogard.hatenadiary.jp 現在で…

クリス・ネヴィル「ベティアンよ帰れ」

ベティアンよ帰れ (ハヤカワ文庫 SF 74) 作者:クリス・ネヴィル 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫SF通巻74という、まあ古典ですね。原著は1970年刊行で、ゼナ・ヘンダースンのピープルシリーズのような「素朴で清貧な古き良きアメリカの片田舎」SFがその年代で…

ガレス・L・パウエル「ガンメタル・ゴースト」

ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫) 作者:ガレス・L・パウエル 東京創元社 Amazon アクアク・マカークのキャラはすごく良い。もともとこのキャラありきで短編を書いてそこからいろいろ転がって長編になったというのも頷ける。巻末にはその短編も掲載され…

川村拓「事情を知らない転校生がグイグイくる。」⑬

事情を知らない転校生がグイグイくる。 13巻 (デジタル版ガンガンコミックスJOKER) 作者:川村拓 スクウェア・エニックス Amazon アニメ化決定おめでとうございます。 しかしどういう風にまとめるんだろうね?主人公2人のキャストにはかなり期待してるんだけ…

柴田勝家「ヒト夜の永い夢」

ヒト夜の永い夢 (ハヤカワ文庫JA) 作者:柴田 勝家 早川書房 Amazon 柴田勝家の長編は初めて読んだな。 ウム、変な話だ。昭和初期を舞台に実在の人物を多数配して幻想的な世界を小説で描くというのはどうやったって「帝都物語」になりそうなものだけれど、「…