- 作者: マーチン・ファンクレフェルト,Martin van Creveld,佐藤佐三郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/05
- メディア: 文庫
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名著と言われて長らく絶版だった本が、待望の復刊。タイトル通り戦時に於ける補給すなわち「兵站」の観点から歴史上の軍事行動を検証する。
扱う時代は広く16世紀から第二次大戦のノルマンディー・ルール地方までを含み、ナポレオンの軍事行動がどのような補給源によって成り立っていたかなど初めて知ることも多い。近代以前の軍隊は停止時よりも移動中の方が補給は容易であった、などという指摘は言われて成る程当たり前のことなのだが、言われなければ気がつかない*1
モルトケと普仏戦争、シュリーフェン計画と第一次世界大戦などいろいろ興味深いところはあって(鉄道の有効性とか)やはり自分の興味の中心は第二次世界大戦にあり、面白く感じるのはそこである。
第五章「自動車化時代とヒットラーの失敗」は高度に機械化されたナチス・ドイツの装甲師団と電撃戦というイメージを払拭してくれるだろうし、第六章「ロンメルは名将だったか」では少ない戦力で果敢に攻勢を行い、イギリス軍をあと一歩の所まで追いつめたロンメル将軍という印象*2に修正を加える必要が生じるだろう。軍事に興味がない人、知らない人こそ読んで欲しいものだけれども、いささかそれは難しいだろうな。
国家が巨大化し軍隊が強大化すれば、それを支える食料燃料武器弾薬も増加の一歩を辿っていく。戦備計画も膨大な物となり、そしてどの戦争も計画通りには進まない物なのだ。
自分が以前大学でボードゲームサークルに所属していた際、アバロンヒル社の「The Longest Day」というウォーゲームを多人数でプレイしたことがある。このゲームの補給ルールは秀逸で、通常作戦級ゲームだと補給を線で表す*3ところを「補給マーカー」だったか、具体的な駒で表していた。さて後方担当だった*4自分が計画通り補給マーカーを前線に送ったはずなのになぜか指揮官たちからは足りないと文句が来る。おかしい、まさに戦場の霧!
…でもなんでもなく、実はソードビーチ担当の英軍指揮官がこっそりガメて蓄えていたのである「へへへ」じゃねーだろ!
まったく戦争とは計画通りに進まないものだ*5