ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

村松恒平「秘伝 〈プロ編集者による〉文章上達スクール (1)」

秘伝 〈プロ編集者による〉文章上達スクール (1)

秘伝 〈プロ編集者による〉文章上達スクール (1)

いわゆる「文章術」に関するハウツー本、マニュアルの類。

なのだが、

カテゴライズにすごく困る。別にハウツーを教えている訳ではないし、技術マニュアルの類ではない。文章を書くとはそういう事ではない、という主旨なので仕方ないから本文の形式上、「問答集」としてみた。

ところで、生まれて初めて「小説」を書いたのは高校三年生の現代国語の授業課題としてだった。*1なにをどうすりゃいいのかよくわからなかったのでとりあえずクーンツの「ベストセラー小説の書き方」と野田大元帥の「スペースオペラの書き方」を読んだ。出来上がった作品は当然ベストセラー小説などではなく、ましてやスペオペでも無かったのであるが(笑)作文技術の本というのはそれ以来ほとんど読んでなくて、実に久しぶりである。

元々はメルマガで配布されていた、プロの編集者が文章を書く事に対する読者からの質問にアドバイスを与える形で答えていくもの。上記の通り書くことの「技巧」ではなく「コツ」を伝えていくような内容である。そういう意味では実践的ではないと思う。いや、読者は実践的に回答を受けとって行くのだが、アドバイスが実践的かどうかというのはひとえに読者の(この場合は書き手としての読者の)腕前ひとつだと思う。

実際、回答は実に面白い。成る程!と唸らせられることもあり、そうだよな!と同意することもある。最も多いのは「それはその通りだが、そう簡単には実践できないんだよ」であるのだが(苦笑)

この本、ネット上では小説書きを目指す人向けのテクニック本として紹介されている事が多いし、実際それはその通りである。質問者のなかには素人だけでなくプロのライター、編集者はたまた作家も多いので特に「プロの小説書き」を目指す人向けの本として紹介されている。実際、その向きを期待して手に取ったのだけれども、なんだかそういうことでもなく、世の中には「文章」というものが実際溢れていて、周辺には様々な問題が在るんだなぁと、それ自体が実に面白かった。「宗教に人々を招くパンフレットで、如何に人を感動させるか」「中学生の娘を小説家にしたい」「日米首脳会議誘致決起文の作成」「外国人男性との結婚について、反対する両親を説得する手紙文」等々。意図的に変わった質問を挙げてみたので一見すると冗談のようだが、どれも非常に真面目で、真剣な悩みがある。

それら多種多様な問題に、実に真面目で、真剣に答えている。そこが、とても面白かった。「なにか一冊、すぐれた本を読めば文章技術はメキメキ上達する」と思っている人には必読。

そんなものはないとよくわかる*2

*1:実はその前、小学校6年生の時に「タイムカプセルに入れよう」だかで書いたことはある。未完品で、出来れば掘り出されたりしてほしくないものである

*2:もっとも世界の果てまで探して不在を確認した訳でもないので、ひょっとしたら在るのかも知れない