ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジョン・スコルジー「老人と宇宙」

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)

老人と宇宙(そら) (ハヤカワ文庫SF)

ライトノベルというものは既に読者の年齢層とは無関係に存在している、という事実に気づいたのは柴田よしきの「炎都」あたりを読んだ頃だと思うが(あれは少なくともティーンズに向けては書かれていないだろう)以来いつかは誰かがやるだろうと思ってた老人ライトノベルついにキター!(AA略)もっとも、主人公が老人と言うだけで作者は30代だし別に老人に向けて書かれているわけでもないw

人類が遙か恒星系にまで進出した未来世界ではコロニー防衛軍が75歳以上の男女のみを対象とした徴募制で軍隊を維持していた。詳細は全く不明ながら「若返り」を期待する為に志願者は欠くことなく溢れ、未知の技術、未知の戦場へと投入された人々が目にするものは…

ヒーローは爺さんで回りも爺さん婆さんばっかりという点は新しくも思うが、他は「二等兵物語に宇宙服着せただけじゃねえか」*1であんまり目新しくはない。未来的なSF小道具の多くがまるでマイクロソフト製品に見えてくるようなネーミングやTM表示をされてるあたりは如何にも現代的に思え、全般的には原作じゃなくてバーホーベン監督の「スターシップトルーパース」のような印象を受ける。「それはつまりダメダメってことじゃないのか」と言われればまあそうなんだけど、老人向けエンタテインメントというものを真面目に考える一歩としては評価したいところなのだ。

なんでも初出はブログ小説なんだそうである。それはちょっと驚いたことでアメリカでも作家と小説を巡る構造は日々変化しているのだろうな。

*1:ロバート・ハインライン「宇宙の戦士」に寄せられた読者の感想