ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

恩田陸「Q&A」

Q&A (幻冬舎文庫)

Q&A (幻冬舎文庫)

文庫落ちしていたので購入。大変スムーズに勢いで読めた。初版刊行は3年ほど前なので今更内容には細かく触れないでおくがやっぱりこの人はすごいな。なんだかわからないモノ、コトを書かせたら天下一品で、反動的にネタ割れしたときのギャップが大きいのが通例なんだけど、本作では最期まで――と言うか、最期になっても――得体の知れないまま物語が進行していくので飽きさせない。色々なジャンルを書く人なのでどこに落着するか全然解らないのだ。*1

タイトル通り全編が問答で描かれ、「三人の盲人と象」のように事件の概要がおぼろげながら見えてくる…そんな話では、実はない。描出されるのはもっと別の事柄で、闇(や)んでいる人々や、社会だったりするのだろう。連作短編怪談のような構成でもあるQ&Aから明確なモノゴトは紡がれず、ぼんやりした不安が充満する世界。文庫解説(建築家森川嘉一郎による)はオウム事件やブログやバトンなど現代ネット社会と絡めたまあ、しごく真っ当な解説*2である。

直接関係ないことだが、日頃から問いかけを繰り返す手合いには注意した方が良いと思われる。「質問攻め」という言葉があるが別段職務上の義務でも何でもなく、空気のように「質問しかしない」ことは戦術としては有効だからだ。なんの戦術だ。

多分我々は誰かに責任を負って欲しいのだ。なんだかわからないモノゴトや、ぼんやりした不安などにね。

*1:ある意味最終章は投げやりっぽく感じたことは事実だ

*2:現代では萌えが未来を代替しているという言質は面白かった