ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

スティーブン・プレスフィールド「砂漠の狐を狩れ」

砂漠の狐を狩れ (新潮文庫)

砂漠の狐を狩れ (新潮文庫)

初めて書店でデザートシボレーの表紙画を目にしたときには思わず平行世界に紛れ込んだかのような錯覚を覚えたw一冊。どっかで聞いた著者だなーと思ったら「炎の門」*1の人で、なるほどこの人戦争マニアの軍事オタクなんだなwwとか、思ったものだが――

長距離砂漠挺身隊(LRDG=Long Range Desert Group)を題材にした軍事冒険小説の類で、丁度タミヤのデザートシボレーが限定再販されることもあって読んでみる。

本文中にもブレダの20ミリ機関砲は登場しまたAM誌今月号の記事にも触れられているけど、本来LRDGの武装トラックは砲の牽引などせず直接荷台に積んでるのでキット購入者は要注意。固定方法は結構いろいろあったんじゃないかと思われ。砂漠の海では他人に決められた規則よりも自己の規範の方が重大なのだ。
どーでもいいけど「耐空」機関砲ってw


当初主人公は王立機甲連隊(RTR)に属する戦車兵で、イキナリA9巡航戦車とか出てきて吹くwこれはハードルが高そうで、涼宮ハルヒじゃないけれども「一般の軍事マニアに用はありません、この中で2ポンド砲、ビッカース機関銃、紅茶沸かし器、ヒッチコック小隊*2徹甲弾で歩兵支援、に反応する訓練された英軍マニアだけ読んでください」などと宣言したくなるものだが――

まあ、それだけではない。

たしかにわたしは機甲師団では欠陥将校だった。わたしは感情移入ができず、部下をひきいることができなかった。しかし、戦争が終わるころには、わたしはずいぶん有能な指揮官になっていた。有能な指揮官とはなにかは以下の基準で定義する。まず上官の視点からいえば、わたしは与えられた任務をきちんとこなし、それがうまくいかなければ即興で考えて、部下の努力を最初の任務と同等かそれ以上のくわだてに向けることを期待できた。第二に、部下の視点からいえば、わたしは統率力と指導力を期待でき、上層部の干渉から守ってくれ、自分でやる気になれない行動を彼らに求めたりしない人物だった。わたしは彼らが持ち前の勇気や機略や不屈さを自由に発揮できる枠組みを提供したのである。

いかにもありがちな文言で戦国大名に学ぶビジネス論並みに笑い飛ばせそうな気がするんだけどさ、なんだかこう、ね。
クドリャフカの順番*3にあった「入須先輩に学ぶ人にものを頼む上手い方法」のように心にグサグサ突き刺さるぞwwww

なんで人が、いや自分が、戦争作品を好んで嗜むのか、本当のところはよく判らない。北アフリカ戦役は民間人、施設等への付随被害が少ないので比較的クリーンなストーリーが作りやすく、それを代表するのが(相当に偶像化されているとはいえ)砂漠の狐ロンメルということか。本書もその長い長い尻尾に属する一冊で極限状態(人間よりも自然環境のほうが相手としては手強い)の中で信頼や義務、責任と信念を構築し、克己し、そしてもっと高い位置へ、自分自身とその精神を止揚させ…


ごめんいまうそついた(・ω・)ノ


おいら戦争ものが大好きなの(・ω・)


だってその方が格好いいからだ! m9(・∀・)ズギャーン!!

 イースンスミスだ。わたしは一瞬、隠れようかと思った。彼はわたしにとってそれほど畏怖すべき存在だった。しかし、彼はわたしを見つけて、こちらへやってきた。「眠れないのかね、ああ、チャップマン?」
「ええ、少佐」
「わたしもだよ。出撃前の夜はいつだってそうだ」
 われわれは朝のあいさつを交わし、しばらく雑談した。彼はわたしの通達と命令についてたずねた。必要なものは全部持ったか?これから自分がどんなことを求められるかをしっかりと理解しているか?
 わたしはだいじょうぶですと彼に請け合った。
「そうだな」とイースンスミスはいった。「わたしもいつも嘘をついたよ」

やったあ!カッコイー!!(*´∀`*)

作者とはきっと良い酒が飲めそうだ。「なんでミルズ爆弾のことをヤンキーどもは手榴弾と呼ぶんだ」とか、そんなことで。


巻末解説によると映画化の企画が進行中とのことである。出来上がったらリアル・ラットパトロールのような一本に仕上がるのだろうか。昔タミヤのデザートシボレーをつかったディオラマでそんなタイトルのものがあった。山田卓司作だったか…

けれどいまはタミヤのプラモデルよりも、マッチボックスのミニカーがほしくなる。そんな一冊。

大日本絵画オスプレイのLRDG本を訳してくれないかなーと、思いつつ。

The Long Range Desert Group (Vanguard)

The Long Range Desert Group (Vanguard)

*1:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20060409

*2:ラットパトロールのリーダーはヒッチコック二等兵じゃなくてトロイ軍曹だ!テキトーなこと書くもんじゃないなー。おまけにあいつら米軍じゃん!SAS関係ないじゃん!!俺にはまだ英国面が足りないようだ…

*3:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20080515