ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

マークース・ズーサック「本泥棒」

本泥棒

本泥棒

…『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され…

前々から気になっていた一冊を、表2折り返しの内容紹介のこの部分がものすごくヒットして読む。ああ、これは良いものですね。ナチス統治下のドイツを舞台にひとりの少女と何冊もの本と、かけがえのない人々と…。防空壕の中で避難民を前にひとり朗読する箇所は大変印象的で、映画化(予定はあるのだとかで)されればきっと美しい場面に、なるだろうなと。

しかし語り手が死神というユニークな視点は文章の方が楽しめそうで、平気で先々の内容を明かしてしまうとんだネタバレ野郎だったり*1 。自らをして別に大鎌など持っていないし顔だって骸骨じゃない旨記してあるのに、なぜか装丁にはまんまそういうイラストが描いてあるのは何故なんだろうな…

本文中にメタ的な引用として登場人物のひとりが地下室で手作りした「本」の原稿が掲載されている。「我が闘争」の頁をペンキで塗りつぶして素朴なタッチの絵物語に仕立てられた『見下ろす人』は泣ける小品なんだけど、透けて見える元の頁も手書きされた本文も、どちらも英語でそれはちと残念。

*1:ヴォネガットの「ガラパゴスの箱舟」にちょっとだけ似ている気がする