- 作者: ヴィットコップ,高橋健二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/11/14
- メディア: 新書
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ドイツ版「きけわだつみのこえ」みたいな一冊。しかして「わだつみ」とは違い扱われているのは第一次世界大戦の学徒兵たちの声である。思うに第二次大戦下のドイツでは学生とか手紙とか言ってる場合じゃないんだろうな。また原著は1918年に原型となる冊子が纏められ1933年に普及版として完成を見たという、戦間期のワイマール共和国時代の産物なので現代的な「反戦平和思想」とは違う哲学で編纂されている。その点にはいささか注意を払った方がいいんだろうな…と「意志の勝利」を見たあとでは、思うわけで。
この本の存在を知ったのは直接的にはアーマーモデリング誌のWW1特集号*1でのことで、その時の記事では「岩波新書、1938」と書かれていたのでそんなムカシの本が手に入るものかッ!と憤慨したものだが、実は1988年に復刊されてて本屋にも図書館にもフツーに置いてある本だった。10年近くも回り道をしてしまった…*2
内容について深く触れるのは避けますが、塹壕線の実相を知るには良い資料だと思います。泥だ沼だ榴弾だ破片だという歩兵の手紙と「空には一片の雲もなく、微風さえ動いていません。東の方、険しい山々の背後に若々しい日が明けて来ます」*3なパイロットのそれとのギャップがなんだかすごいな…
キリスト教精神とか塹壕の中でみんなでゲーテ朗読したりとか、成る程ヨーロッパ的な特色はあるけれども、やはりなにか、時代とか民族とかの違いを越えて通じるものはあるもので、同様の書物は太平洋戦争のみならずベトナム戦争を主題にしても編纂できましょうし、ソ連のアフガン侵攻を扱ったものが実際に在りました。*4が、翻って現在只今、いわゆるテロ組織を構成しているような人々にこのようなものを求めることは出来ないかもしれないなあと、ふと思った。