ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

トム・ロブ・スミス「チャイルド44」(上)(下)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

何度か書いてきたことだけれど、自分はこれまで、世界で最も過酷な境遇を強いられるハードボイルド小説とはナチスドイツ政権下に於いて犯罪を捜査する類の作品だと思っていた。しかし今回それを改める。世界で最も過酷な境遇を強いられるハードボイルド小説はスターリン体制下のソ連に於いて犯罪を捜査する類の作品である。「ゴーリキー・パーク」どころの話じゃないぜ!?いや確かに世界の地理歴史を広く見渡してみればもっともっと過酷な状況は存在するだろう。しかし、例えばポルポト政権下のカンボジア放逐農場で謎の連続殺人事件!が起きたとして、その社会の対応は


そんなのほっとけ(´・ω・`)


みたいに、多分なるだろうから、そもそも社会秩序が安定していないと犯罪捜査など行われないものでな。


それでその、スターリン体制下もいい加減にど末期のソ連では社会秩序こそ安定して維持されているものの、そんなのタテマエだらけの虚像でもしも実態を暴こうとしようものなら朝の四時に激しくドアが叩かれ宅急便じゃない人たちがドカスカ押し寄せてくる。だけでなく、主人公である国家保安省捜査官のレオくんは愛する妻のライーサさんから


「アンタと結婚したのはもしもプロポーズを拒絶したら逮捕されるだろうと思ったからよ」


などと衝撃の告白wを受けたりせねばならない。なんというハード!いやすぐるボイルド!!


だいたいそんな感じです。「理想的社会主義政治体制であるソビエト連邦では犯罪など起こらない」という共産党のドグマが社会や人々を拘束している状況が物語の骨子なのだけど、実際はどうだったのか。最近じゃ生まれたときには既にソ連が崩壊してたなんて人たちもどんどん社会に出てきてその点実感わかないかも知れないが…


まあ、想像がつくわな。話は違うけどちと前に読んでさっぱり実感のわかなかった「ユダヤ警官同盟」に於けるユダヤ人コミューンの生活よりもはるかに実感するんだよなー。そっちは架空世界だろうとか、そういうことではなくてね。


ところで誰か本当にポルポト政権下のカンボジア放逐農場で謎の連続殺人事件を書いてくれないものでしょうか?犯人は医者か大学生かインテリか、さもなきゃ単に眼鏡をかけてるヤツだと思います!密告!!死刑!!!

みたいなw