ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

H・H・エーベルス 他 植田敏郎・原卓也 編「怪奇小説傑作集5」

怪奇小説傑作集5<ドイツ・ロシア編>【新版】 (創元推理文庫)

怪奇小説傑作集5<ドイツ・ロシア編>【新版】 (創元推理文庫)

怪奇小説傑作集もこの「ドイツ・ロシア編」で完結。全部読んであらためて教科書だよなあと思わされる。どの巻も翻訳者・編集者による方向性が色濃く打ち出されていて(いや、なんだってそうだと思うんだけどさ)大変勉強になります。エンターテインメントだけど。

本数だけで言うとドイツ4本ロシア5本とほぼ拮抗しているのだけれどボリュームには随分差があって、目見当では1:4ぐらいのページ比に思えます。内容的にも全く違う色合いで、ドイツ編は短めで「民話」のような印象を受ける怪奇談、ロシア編は文学的で「小説」のような、あくまで印象ではあるしそれでは収まらないのも双方にあるしであてにはならない分類だけれど。

面白さ、で言ってしまえばロシア編のほうが面白かった。ゴーゴリチェーホフトルストイなんてちゃんと読んだのはこれが初めてかも知れませんな(わら ゴーゴリ「妖女(ヴィイ)」は通夜の晩に妖怪変化山ほど集って結界に逃れた主人公の前に巨大な目を持つ土霊が現れ――と、そのシチュエーションは昔から有名だし翻案をよく見た記憶があるが(ゲゲゲの鬼太郎とか)、原典に当たればキリスト教神学校のいささか堕落した学生が土着怪異に結局は敗北する内容にびっくり。雄鶏が夜明けを告げて逃げ去るハッピーエンドじゃなかったんだ!

読んでみるもんですねえ。

タイトルは「妖女(ヴィイ)」だけど本文では「土霊(ヴィイ)」となっていて、結局ヴィイってナニ?そして本文中で何度も繰り返される「妖女!妖女!」という叫び声が全部ょぅι゛ょに変換されてた俺の脳内には怪異が巣くっている…