ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

フィリップ・カー「密送航路」

密送航路 (新潮文庫)

密送航路 (新潮文庫)

ベルリン三部作で有名な?フィリップ・カーはその三作の他一本読んだきりで全然手を出してなかったんだけど、たまたま表紙が最近存在を知った重量物運搬船だったので興味を覚えて読む。原著は1997年刊行。

大西洋を渡ってヨーロッパまで小型(かつ高級)ヨット群を送り届ける運搬船を舞台に船内に隠された犯罪組織のマネーロンダリング資金を狙う強盗と、まったく別口で麻薬密輸を行うヨットを捜査するFBIの捜査官たちが呉越同舟、だいたいそんな話。原題を“A FIVE YEAR PLAN”と言って主人公デイヴが獄中で5年間練り上げた計画と旧ソ連の「5カ年計画」を掛けたダジャレになっていて…というのはオチで再確認。この作品が書かれた時期はロシアってエリツィン政権末期でドン底なんでもありーみたいな印象だったことも確かではある。

…かなぁ(苦笑)


主な舞台になるヨット運搬船と搭載された各ヨット乗員の人物模様がいちばんの醍醐味かなと思う、ちょっと古めかしい感じの(実際古いんだが)、いかにも新潮文庫が好きそうなタイプの、海洋冒険小説か。正直船に乗り込むまではいささか冗長で無駄に登場人物も多く、主人公もヒロインのFBI捜査官ケイトも面白みのあるキャラクターでは、ない。その辺バッサリ改編して映画仕立てにしたら面白いかなと思う。翻訳は1999年刊であとがきには「映画化が決まっているそうだ」と書かれているけど、寡聞にして知りませんね…*1

モデルになったのは多分ドックワイズ社のこの船で、実際映像で見た方が面白いと思うんだよなー。

なんだかこのままガンダムで宇宙を飛んでそうなデザインではあるのだが(笑)





いまさらフィリップ・カーに手を出したのは過日ベルリン三部作以外に読んだただ一つの作品「屍肉」が、現代日本で再評価されてもいいんじゃないかな…と、思ったからで、

屍肉 (新潮文庫)

屍肉 (新潮文庫)

チェルノブイリ原発事故と汚染牛肉が主題だった覚えがある。


ところで久しぶりに新潮文庫のアクション小説を読んでみて、例によって巻末に同系統の作品とあらすじがいくつも紹介されているのだけれど、ダークピットシリーズはいつみても笑える(w; あとハロルド・コイルの「軍事介入」asin:4102359036の内容が謎過ぎる…

*1:書影みれば判る通り帯には「トム・クルーズ映画化権獲得」って書いてあるけどね