ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ハリントン・E・ソールズベリー「攻防900日」(上)

攻防900日〈上〉―包囲されたレニングラード (ハヤカワ・ノンフィクション・マスターピース)

攻防900日〈上〉―包囲されたレニングラード (ハヤカワ・ノンフィクション・マスターピース)

と、いう訳で独ソ戦定番の書をまず半分。しかし真夏に読むもんじゃないよな(笑)

原書は1969年刊行で、ソ連がまだまだ頑張ってた時代の本ですね。スターリン死亡後に公刊された書籍や当事者の証言などを丁寧にあたっていて、しかしながら未だにソ連上層部での権力闘争がダイレクトに波及している時期でもあるのでいろいろ大変なんだろうなーと、そのあたりは多分下巻で解説されるんだろう。

独ソ開戦前後の両国首脳部の状況などは様々な資料で読めるものだけど、事後の推移はレニングラード中心とした北部を主体に記述されていてバルト三国からの撤退の様相などは注目すべき個所と思われます。また「ダニエリ・ハルムス」表記でこのひとについて書かれた箇所があったのは嬉しい驚き。レニングラード在住だったのだなー。

逮捕だ裁判だ銃殺だという話も次から次へと出てくるんだけれど、開戦直後のレニングラードで「イギリス製のツイードの上衣」に「外国製とみまちがう帽子」を被って記録映画撮影用の「映写機をかついでいた」カメラマン、ゲオルギー・シュリャーチン氏が

参謀本部はどこですか?と誰かに聞いたとたんに捕まった。

のは、まー、戦時下ってこわいですねガクブル。同氏は無事解放されたそうで、しかしそうでないような人も大勢いたのでしょうね。


ソ連軍が外征的軍隊だってのは自明の理ですが、とりわけ1930年代のソ連軍は自国領土内で防衛戦闘を行うことを全く考慮していなかった旨の記述にははたと驚き膝を打つ、そんな感覚。今も昔も、ひとは自分の見たいものしか思い描かないものだなと思う訳だ。