ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジュノ・ディアス「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

当世風のアメリカン・オタク気質人物が主人公だとかでちょっと前にいろいろ話題になった一作。なるほど確かに第一部第一章で語られる主人公オスカーの人生と趣味と趣味と趣味と挫折と挫折と挫折と挫折には全身を掻き毟られる様なショックを受ける。非モテマンガアニメゲーム好きで女の子苦手でいつの間にか幼馴染の友人からも孤立化して「コイツにオンナを紹介するのは俺が恥ずかしい」的最下層ヒエラルキーに墜落していたオスカー君、大学入学して心機一転、これからは生まれ変わろうとゲームサークルに入るあたりですいませんもうやめてかんべんしてくださいむしろ死なせて下さいぐらいのことは思ったんだけど、2章以降は普通に家系年代記小説だった。いや、違う人物に記述が移っても語り手の口からは様々なotakuness単語固有名詞引用台詞が飛び出してくるんで翻訳するのは大変だったろうけれど。

ラテン・アメリカ的マジックリアリズムと評されるのもわからないんでも無いけれど(呪いとかマングースとか、マングースとか呪いとかだ)骨子に在るのは長年独裁政治が続いたドミニカ共和国と、独裁政権が崩壊した後のドミニカ共和国と、アメリカに亡命、あるいは移住したドミニカ共和国人たちと、それと愛と暴力のお話。

まあ多分、当事者にとっては愛は銃弾よりも強いんだろうが、大抵の場合当事者以外にとっては愛よりも銃弾の方が強いなあ。

長年「D&D」を始めとする伝統的な会話型RPGに慣れ親しんできたオスカー・ワオが、ある時突然世の潮流がマジック・ザ・ギャザリングを始めとする対戦型カードゲームに移行してショックを受けるシーンには共感を覚える。共感を覚えるのはそこだけじゃないだろうってゆーな!!