ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジャック・ウィリアムスン「エデンの黒い牙」

エデンの黒い牙 (創元推理文庫)

エデンの黒い牙 (創元推理文庫)

人狼」と「魔女」を題材にした伝奇的ホラー。著者ウィリアムスンはハヤカワSF文庫の比較的初期の頃に野田大元帥の訳でスペースオペラが出てた人で記憶している。一冊ぐらいは読んだかなあ。

原著は1948年刊(ベースになった短編版は40年の作)でいわゆるパルプホラーの類なのだけれど、ジョン・W・キャンベルの「アンノウン」誌に掲載されたSF畑の要素が随分導入されていてる一本。遺伝子(劣性遺伝)が重大な鍵を握っていたりするサイエンス・ファンタジー的なものか。科学的な要素と呪術的なものが絡んで主人公ウィル・バービーの巻きこまれる状況が果たして現実なのか幻覚なのか、という展開。キャラはともかく読者としては一目瞭然、ライカンスローピー(魔女族)達の集団が探し求める救世主「夜の子」の正体も勘のいい人ならすぐに気がつくでしょう。けれどモンドリック博士がゴビ砂漠で発見した魔女たちに対抗し得る「武器」の秘密が最後まで明かされずにいて、その正体は意外でした。当時として同時代的なガジェットではあるのかな。

ストーリー展開もスピーディで結構などんでん返しもあり、なかなか面白い。しかし表4あらすじに書かれた「カルト教団聖典にもなった」ってアオリ文句は、巻末解説読む限りフカシ過ぎにも程があると思う…

原題を「DARKER THAN YOU THINK」という。「DAKER THAN BLACK」と何か関係があるかどうかは知らにゃい。