ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

シェリー・プリースト「ボーンシェイカー ぜんまい仕掛けの都市」

ボーンシェイカー ぜんまい仕掛けの都市 (ハヤカワ文庫SF)

ボーンシェイカー ぜんまい仕掛けの都市 (ハヤカワ文庫SF)

まず最初に申し上げておくが「ぜんまい仕掛けの都市」なる副題の意味はさっぱりわからない。作品の主な舞台はスチームパンク的変容を遂げたシアトル市街地だけれども、そこでなにかぜんまいが重要な役割を果たすわけでは、ない。その反面「ボーンシェイカー」をメインタイトルに据えている意味は最後まで読むとはっきりする。作中時間で15年前にシアトル市に大災害をもたらしたその大型掘削機械は、ずっと回想的に語られるばかりだけれどもクライマックスで登場し、物語に大きな役割を果たす。そうね、母子の話なんだねこれは。


オルタネイティヴな19世紀アメリカを舞台にしたスチームパンクSF。主人公のブライア35歳息子のジークは15歳とまずその年齢設定に驚かされる。いやね、15歳なら十分主役を張るべき行動力と責任があってしかるべきだと思うんだけど、ジークことイジーキエル君がこの年齢のフィクション・キャラクターにしては馬鹿で間抜けで無能すぎると思うんだよな。これがローティーンの設定ならまだしもね。そんなわけで35歳のお母さん頑張る話になるわけです。15年前にカタストロフを引き起こした張本人が当時現役バリバリのマッドサイエンティストだった自分の旦那であったり、凍土開拓用巨大自走掘削マシン「ボーンシェイカー」が暴走して開いた大穴からモクモク沸いてきた有毒ガスに身を挺して大勢の囚人の命を救って死んだ官が実の父親だったりで、酷く恨まれたり妙なところで尊敬されたりと人生大変過ぎるシングルマザーです。


孤立無援なわりには実は強力なコネクションに守られてるヒロイン像というと(あまり良くない意味合いで)「アレクシア女史」のシリーズを思い出したり。あちらも大活躍するのはマコン卿と結婚してからで、スチームパンクって海の向こうでは既婚女性板のものなのだろうか?「リバイアサン」は児童物か…いや、あれも児童物のフリをしたなにかな??


巨大な壁に囲まれ死者をゾンビ化させるガス(イマドキ過ぎるww)が澱む無法地帯と化したシアトルの様相はスチームパンクの正しい(?)方向性に則るグロテスクなものだけれども、どっかこー、ヌルいよなあと思わざるを得ないわけで、読後感としては微妙。そもそものお話しのきっかけは父親の無実の証拠を入手するべくジーク君が単身且つほぼ無計画に壁を越えて行くことで始まるのだけれど、仮にジークが思うように暴走事故の背後に別人の関与があったとして、それでレヴィティカス・ブルー博士が無実だという理屈はおかしいよなと思ってたら結局そんなものは出てこなかったんでワラタ。その代わりに提示されるものが何か、というのが主要なテーマ(だろう)なんだけど、やっぱジーク君オマヌケである…