ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ゼナ・ヘンダースン「ページをめくれば」

ページをめくれば (奇想コレクション)

ページをめくれば (奇想コレクション)

ゼナ・ヘンダースンと言えば「ピープル」シリーズが有名でハヤカワSF文庫の「果てしなき旅路」「血は異ならず」の二冊とも大好きで本棚に揃えてあるのだけれど、「ピープル」シリーズってぶっちゃけ全部同じ話で(流石に暴言だと思うが)、河出書房新社奇想コレクションから本書が出たときにはあーまた「ピープル」シリーズみたいな話なんだろうな…と、ちょっと敬遠してました。だからまー、冒頭の一本「忘れられないこと」がやっぱり「ピープル」シリーズでおなじみのメンバーまで現れたときには(実にいい話なんだけれども)やっぱり感が否めなかった…


けれども、他は違いました。


清廉な人々のハッピーエンドばかりではなく、暗いラストや純然たるホラーや、そしてもちろん清廉な人々のハッピーエンドも様々に。それでも頻繁に登場する純朴な田舎の風景と「教師」としての語り手に代表されるような、古き良きアメリカの古き良きモラルが作風のバックボーンになっているのは明らかです。子供を題材に一風変わったことやものを描くとやっぱり巧みで、ちょっと藤子不二雄風味でも…あるかな。「いちばん近い学校」ラストの1行は実に秀逸。

子供の目にはファンタジックにとらえても大人の視点は即物的に対応する「先生、知ってる?」のやりきれなさは格別。悲しいお話なんだけどね