ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジェフリー・アーチャー「十二枚のだまし絵」

十二枚のだまし絵 (新潮文庫)

十二枚のだまし絵 (新潮文庫)

ジェフリー・アーチャーって短編の方がいいよな…と思う。お話は他愛ないものが多いんだけど、その他愛の無さが却って心地よいのは陳腐さが気にならない筆運びの巧さかな?本書に収録されている作品では「シューシャイン・ボーイ」がよかった。北大西洋にある小さな群島、英国領セント・ジョーンズの総督が急遽英王室・政府の重鎮ビルマ伯爵マウントバッテン卿(勲位は略)の訪問を受け、島中総出の大歓待で貧しい植民地の実態を気づかれぬよう大わらわ…と、この手の話は枚挙にいとまが無いと思う。田舎から両親が上京してくるので…とか、ペンフレンドと初めて直接会うだとか、コメディの黄金パターンでたしかSDガンダムのマンガでもあったぞ(笑)気づかぬフリをしていながらも実はゲストにお見通し…というのがまたパターンでもある訳ですがそこを巧く運んで行くのが戦術と腕というヤツだな、作者のね。

ほんでこのアーチャーって人は昔から作家業の傍ら詐欺罪なんかで投獄されてるような印象があるんだけど(笑)「試行錯誤」の主人公が獄中から出す手紙の書式がどうも実物に即しているようで妙にリアルww

謎ときが多いのは確かだけれど「だまし絵」ぽくはないかな…と読み終えて解説見たら、現代は“Twelve Red Herrings”で全ての作品、原文内に“red herring”が隠れているんだってさ。「十二匹の赤い鰊」では日本に馴染みが薄いから…との理由でこの邦題に落ち着いたそうです。英国スノッブを解するのも大変ですね。

ジェフリー・アーチャーって要するにライトノベルだよなとも思うのだけれど、それは多分、あまり同意を得られまい。