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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ケイジ・ベーカー「黒き計画、白き騎士」

黒き計画、白き騎士: 時間結社〈カンパニー〉極秘記録 (ハヤカワ文庫SF)

黒き計画、白き騎士: 時間結社〈カンパニー〉極秘記録 (ハヤカワ文庫SF)

先に文句から言う。書影にもあるようにこの本の表紙イラストは荒野に立つ小さな人影とそれを覆うような巨大な宇宙船(?)らしきSF的飛行物体が描かれているんだけれど、そんな場面は出てきません。また表4あらすじには「時間結社の腹黒き計画に踊らされ」などとかなり陰謀めいたことが書いてあるけれど、読んでいてそんな感じは特に受けない。装丁と本文内容には随分隔たりがあるようで、編集作業(と、営業方針)で齟齬でもあったのかなーと。

「時間結社<カンパニー>極秘記録」とあるように、24世紀の人類社会に設立された「科学者とビジネスマンからなる秘密結社」がタイムマシンを利用して過去の歴史に不老不死のサイボーグ・エージェントを送り込み、人類の歴史に干渉して貴重な文物を収集して…と書くとなるほど陰謀臭いんだけど、連作短編集の主人公、語り手となるエージェント達は基本的にいい人ばっかだしカンパニーが集めてるのも趣味や道楽を重視したような物品ばかりであんまり悪そうには見えません。大規模資本と技術投資で人類史に干渉しつつ趣味と道楽にしか興味がなければそれも立派な悪行かも知れんが(笑)

個々の作品に直接の関連は薄いのだけれど、なかには度々登場するシリーズキャラクターもいて登場人物達は魅力的です。24世紀のロンドンで幼年期から思春期への成長を段階的に記述されていくアレックのキャラが、出生の秘密をはじめいろいろとカギを握っていそうなのだけれど、本書ではそこまで踏み込まれない。この短編集以外にも中編や長編などいくつか作品はあるそうなので、訳出が進めばもう少し全貌が見えてくるかも知れません。最後の一編「ハーランズ・ランディングのホテルにて」では未来社会で起きた(らしい)対立抗争や脱走兵などもが記述されていて、世の中ホワイトナイトばかりじゃないのだという面も明らかにされる。人類史を巡る大掛かりな陰謀というよりは歴史的(アメリカ史的な?)トリビア小話のバックグラウンドに謎の組織を噛ましているような設定か。

良くも悪くも点描的で全体像が見えにくいとはいえるかな。ひとつひとつの作品は叙情的なものありドタバタコメディもあり、いろいろなタイプの作品を読ませてくれて読書感覚としては楽しい物です。残念ながら作者のケイジ・ベイカーはもう亡くなられているのだけれど、妹さんが書き継いでいるとかで日本で続きが出る可能性もありそうですけれど…

そのときはイラストレーター変えてほしーなー、とか。