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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

アガサ・クリスティー「ヘラクレスの冒険」

引退を考えたエルキュール・ポワロが自らのクリスチャン・ネームになぞらえてギリシア神話ヘラクレスと同様に十二の事件を解決していく連作短編集。

エルキュールの名がヘラクレスのフランス語読みだと知ったのはたしかABC殺人事件で、考えてみると湯気立つ小さなゆで卵みたいな人物によくもまあそんな大層な名前をつけたものだなと、そこはクリスティ一流のユーモアなのでしょう。半ばネタ的に次々とヘラクレスの難題じみた事件が持ち込まれたり遭遇したりする流れはいささか眉をひそませる向きがあるかも知れませんが、トリックや論理よりエンターテインメントに徹する姿勢は「ミステリーの女王」の終始変わらぬ執筆姿勢でもあり。結局大事なのは「人情」で、そこを大切にしているからこそ多くの人々に末永く愛され、且つ同時にある種のミステリー小説ファンからは(まあ、多少は)嫌われる面もあるんだろうなと再認識。

ひとつひとつは小さなお話だし、ストーリー展開の意外性にのみ重点を置いたような物が多いので粗をさがせば実はいろいろ出てきそうなんだけど、こたつにみかんでTVの水戸黄門をみるような、そんな感覚でほのぼの読める一冊です。クリスティって萌えツボを心得た作家だったんだろうな。


ところでエルキュールがヘラクレスだってのは知ってたんだが、ファイブスター物語の「アルス・キュル」のネーミングはなにが由来なんだろう?