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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

マーク・アレン・スミス「尋問請負人」

小説・ミステリ

尋問請負人 (ハヤカワ文庫 NV)

尋問請負人 (ハヤカワ文庫 NV)

図書館でなんとなく手に取ってみたらなかなかの掘り出し物でした。

ウォルフガング・ロッツがかの名著「スパイのためのハンドブック」で書いてたけれど尋問や拷問に「耐えた」という話は当人の資質や根性の問題ではなく、単に尋問者の技術が未熟であったに過ぎない…だとか。希に勘違いする人がいるけれど「拷問」というのは尋問の一形態なので、重要なのは被験者から回答を得ることです。回答すなわち情報であって、目的のない拷問はただの暴行に過ぎない。主人公のガイガーは「あらゆる拷問のテクニックに通じた尋問のプロ」という設定で、しばしばアメリカのハードボイルドや日本のライトノベルに出てくる種類の、自動的な機械と悟りを開いた仙人がごたまぜになったようなキャラクターです。美術品窃盗の容疑者を尋問するという依頼に連れて来られたのが十二歳の子供で…といったあたりから話がいろいろ転がり出す。

幼少時の記憶を持たない拷問作業のプロフェッショナルという、お話しの中核を占める要素のキーになるのはやっぱり児童虐待であーまたこれかいと思わないこともないけれど、主人公よりは相棒のハリーであるとか敵役であるホールのキャラクターとか脇の人物がいろいろ魅力的です。正しい「情報」つまり真実に迫っていくストーリーの流れ具合が拷問による尋問作業と重なるような、なんだかそんな感じ。いわゆるベトナム世代の人間が、現代を舞台にした作品では既に初老の年代に差し掛かっているのはいささかの驚きを持って受け止める発見であり。作中数カ所で登場人物が拘束を受け拷問される描写がありますが、抑制された記述なのでグロ耐性の少ない方でも大丈夫でしょう。むしろそれ目当てで読むとスカされるかも知れません(笑)

ところで訳者あとがきには原書がアメリカでも高い評価を受けている例としてamazon.com のカスタマーレビュー得点を上げているけれど、日本での例を鑑みるにそれは果たして真実味のある「情報」なんだろうかと、その点はちょっと気になりました。最近このスタイルのあとがきって多いよね。書くことないんだろうねえ。


余談:むかし道原かつみのコミック版「銀河英雄伝説」で、なんの嫌疑だったかラインハルトが囚われて拷問されそうになったとき、あらわれた尋問者がビキニパンツ一丁のマッチョスキンヘッドとゆー、いかにも「これからごーもんしますよー」的キャラで盛大に吹いたのをこの本読んでて思い出したw でも銀河帝国のいささか時代錯誤的な社会性を考えたら、アレはアレで正解だったのかもなあ…