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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ベン・アーノロヴィッチ「女王陛下の魔術師」

女王陛下の魔術師 (ハヤカワ文庫FT ロンドン警視庁特殊犯罪課 1)

女王陛下の魔術師 (ハヤカワ文庫FT ロンドン警視庁特殊犯罪課 1)

「ロンドン警視庁特殊犯罪課」シリーズ第一巻。ちなみに女王陛下のじの字も出てきやしません(笑)現代のイギリス・ロンドンを舞台にしたマジック・リアリズム系のファンタジックなミステリー小説。などと書くと最近読んだ「クラーケン」と真っ向被るような気がするけれど、中身は正反対で非常に読みやすく解りやすい展開でした。とある殺人事件で現場詰めしていた見習い巡査のピーターが出会った「目撃者」が幽霊だったことから、ロンドン警視唯一の魔術師捜査官ナイティンゲール主任警部の元に配属され、事件の真相を探りながら自らも魔術修業をはじめて…と、ありがちといえばありがちな、しかし現代ロンドンの風俗と中世・古代からも連綿と受け継がれるイギリス文化の伝奇的要素とが上手く混じったなかなか面白い一冊です。作者の人は「ドクター・フー」などTVドラマ脚本畑の出身だそうでその辺の経歴はリーダビリティの高さに影響してるのかしらんなどと思ったけれど、訳者あとがきによると脚本の仕事にはさほど恵まれず本書刊行まで20年近く不遇だったそうな。人間いろいろですね。

現代イギリス的だな…と思ったのは商品名やTV番組など現行のガジェットが出てくるだけではなく、主人公のピーター・グラント新米巡査が有色人種(北アフリカ系移民のハーフ)だというキャラクター性そのものでしょう。寡聞ながらこの手のライトなイギリス産の文芸作品では初めて目にするタイプのキャラでした。いかにも多人種国家となっている現代のイギリスらしく、民族的アイデンティティにそれほど重きを置いていない*1のは却って好感が持てる気がします。本文開幕当初の20ページぐらいは特にその点に触れてないんだよな。なんかこー、凡百な作品であれば真っ先にそれを提示しそうなものですが。

シリーズは好調なようで今月は第三巻が出るんだっけ?先行きいろいろ楽しみですね。


読む前はこの表紙絵からもしも腐女子向き作品であったらどうしようと身構えたのだが、幸いそんなことはなかった(w

*1:家庭・家族のレベルに留まる