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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ベン・アーノロヴィッチ「顔のない魔術師」

顔のない魔術師 (ハヤカワ文庫FT)

顔のない魔術師 (ハヤカワ文庫FT)

「ロンドン警視庁特殊犯罪課」シリーズ第二作。前作のラスト近くでちらりと登場した男性生殖器を食いちぎる(ひぃ)謎の女とジャズ・ミュージシャンを次々に殺害していく通称「ジャズ・ヴァンパイア」の謎を追うのが本筋となるこのお話、邦題となってる「顔のない魔術師」は事件の黒幕でこそあるものの、やはりラスト近くでちらりと登場するだけで以下続刊、あまりストーリーには絡んできません。このあたり邦訳のセンスを若干疑うところで*1、原題“MOON OVER SOHO”の通りにロンドンのソーホー地区という地縁を主題に、各章の章題にも用いられているジャズ・ミュージック風味な恋愛メイン…なんだろうなあこれ。ピーター君の尻の軽さはなんとかならんのか、前作で顔に大怪我を負った同僚レスリーのことはほとんど顧みず、事件関係者の女性とさっさとねんごろになってしまうのはどうよと若干戸惑う。まーその関係者であるシモーネのパートが不自然なまでに多いのであーこれそーゆーことねと(ある程度は)展開が読めちゃうきらいも、無きにしもあらず。

ナイティンゲール主任警部は前作の傷がまだ癒えず、あまり活躍の場面はありません。それでも彼の過去、謎や秘密はいろいろあってこの先伏線なんだろうなあ。

はっきりとは書かれていないけれど、おそらく表紙に描かれている赤毛の女性がそのシモーネなんでしょう。こういう時に主人公ピーター君のアフリカ系の人物像を描けないのは80年代に日本の出版業界を席捲した「黒人差別」問題の残滓なんだろうなあ。チクショウ、大阪の家族め!*2

黒人差別の観点でいうと本作でナイティンゲールが伝統的な意味合いで「黒魔術(ブラック・マジック)」という単語を使うのに対してピーターが「倫理的に問題のある魔術」とでも言い換えてくれとクレーム付けるところはちょっと面白かったんだけどね。

*1:前作を読んだあといくつかレビュー見てみたら原文の味を拾ってないという批判が結構あった

*2:どこまで都市伝説なんでしょーねーあれはー