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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

大森望・日下三蔵 編「年刊日本SF傑作選 極光星群」

図書館でみかけたものをランダムに読んでるこのシリーズの最新刊。ようやく全部追いついたかなーと思ったらまだ一冊読んでないのがあったか。ともかく、2012年版です。本書の収録作品の中ではとりわけ乾緑朗「機巧のイヴ」がよいですねえ。江戸時代を舞台にした自動人形(オートマトン)もので、舞台設定はともかく話の運びやラストのオチはロボット小説としてはある意味ありきたりでベタな「意外性」なのだけれど、そこに結実するまでの伏線の張り方や様々な描写が非常に丁寧に組み立てられて実に綺麗にまとめられる、これはひとつのからくり仕掛けを見ているような感覚か。こういうものを「世にも奇妙な物語」でやってくれないかな…

瀬尾つかさ「ウェイブスウィード」も良かった。環境の激変した未来の地球世界を舞台にした海洋SFで、海洋SFの何が良いってヒロインが(中学生の年齢ですぞ!)水着になってもちっとも不自然に見えないことで!あります!!アニメにならないかなーこれ。

アニメと言えば會川昇「無情のうた『UN-GO』第二話」は本シリーズではじめて収録されたアニメ作品の脚本で、SF小説のアンソロジーにアニメの脚本を入れるのは面白い試み。けれど残念ながら元のアニメを見ていないので映像が頭に浮かばずちと困る。一部のキャラにいたっては男女の性別すら不明だ(苦笑)例によってのマンガ枠で入ってる平方イコルスン「とっておきの脇差」はほのぼのしたタッチで実に殺伐としたおはなしで、わずか6ページの小品ながら何度も読み返して味わいました。うん、なんか好きだぞこのマンガ。宮内悠介「星間野球」がギャグ小説なのはなんだろう、このひと作品の舞台が宇宙になるとお笑いスイッチが入るんでしょうか?よくできたコントを見てるようで面白かったなあこれも。

これまで読んできたものに比べると如何にも直球なSFが多くてその点意外なんだけど、初出が非SFのいわゆる中間小説雑誌から採られたものが2本入ってたことが意外。むしろSFのジャンルプロパー以外に向けて書かれる作品の方が如何にも直球なSFになるのかも知れませんね。ひとつは上にあげた乾緑朗の「機巧のイヴ」、もうひとつは上田早夕合「氷波」でどちらもロボット(人工知能)ネタで被っているのは、これは選者の計らいでしょうな。

第4回創元SF短編賞受賞作、宮西建礼「銀河風帆走」はまた随分と古典的な、良い意味での古典的な外宇宙探索もので、これをまだ二十代の現役大学生で執筆されたというのは確かに驚かされます。骨太のハード宇宙SFですね。


今回も例によって(?)編者による概況ではかつての「本の雑誌」の特集からはじまる「クズSF論争」の頃のエピソードが語られて、そこから今はSF夏の時代で云々なんてことが書かれてる。実際SF小説が盛り上がってるのはよくわかるんだけれど、でもそれって「夏」なのかなあ?なるほど昔「SF冬の時代」とか「氷河期」などと言われたのは現在までも尾を引くような憤慨すべきことかも知れませんが、じゃあ今が夏ならいずれは秋に、冬になるんだろうか。小説作品の人気不人気を安易に季節・気候変動に例えるのはあまりに非科学的で、SFらしくないことですよねと、それはたぶん1997年に言っとくべきだったんじゃないかと今更。