ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

東郷隆「定吉七番の復活」

定吉七番の復活

定吉七番の復活

東郷隆による和製スパイアクションコメディ「定吉七番」シリーズ、四半世紀ぶりの新作。以前の作品は全部でないけどいくつかは読んでいて、当時まだいち流行作家に過ぎない田中康夫(をモデルにしたキャラ)が出てくる「ロッポンギより愛を込めて」が好き。あの辺読み返すとバブル当時の世相が相当茶化されていて、それはそれで面白いもんです。

で、新作である。『小説現代』誌に連載第一回が載ったのは読んだ覚えがあるけれど、その後すっかり忘れていて気がついたら一年以上前に単行本になってたもの。

うううううううううむ、なんて言いますかね


昭和だ。


いろいろとこう、古臭いドタバタが古臭いままに復活したようなものか。大きなところでは現実の東西冷戦が崩壊したように関西と関東とで起きていた冷戦構造が融和してたり、その他小さなネタでもいろいろ笑えるところはあるのだが、全体的に今更感が漂うことは否めません。新潟県田中角栄(をモデルにしたキャラ)がメインとなる設定は、ひょっとしたら四半世紀前にお蔵入りしたネタを引っ張り出してきたのかなーと、そんなことすら邪推する。

いまひとつノリの悪さを感じたのは本作がジェームズ・ボンドシリーズのどの作品をパロディにしているのかが不明瞭だったところにあるのかも知れません。イアン・フレミングの小説よりは映画をネタ元にして広い読者層に訴えた以前のテイストを求めるなら「消されたライセンス」を範に取って群馬県を舞台に…とか、そんなのはどうだろうなー。