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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

佐藤哲也「下りの船」

下りの船 (想像力の文学)

下りの船 (想像力の文学)

読み終えた後、奥付の発行年をみて軽く驚かされる。2009年のものだったんですね。てっきり2011年の震災を受けての内容かと(勝手に)思いながら読んでいたのは、全編に渡って濃密に立ち込める閉塞感が却って「いま」の雰囲気に合致するということなのだろうなあ。

遠い未来、どうやら文明が曲がり角を迎えつつある地球から「棄民政策」として植民惑星に送られた人々と当地の社会の、いかにも植民地的に腐敗した――なんて差別的な言い草だろうね!――様々な様相を断片的に積み重ねていく、ちょっと変わった語り口。いちおうアヴという少年が主人公らしいといえばらしいのだけれど、なにか主人公的な活躍をするもので無し、大勢の共感を得ることは少ないだろうなあ。

でもこのドライな筆致は何か好きだな。幼い頃からただ銃で追われ常に誰かからの強制で生きてきたアヴが、ただ一度だけ己自身の決意・決断で行動を選択する様は良いものだけれど、だからといってそれが何かをもたらす訳でもなんでもなく、ただただどん底である。

そんな話が好きだというのも、ちょっと考え物ではあるのだろうが(笑)