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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

コニー・ウィリス「混沌ホテル」

小説・SF

短編集ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス、二巻本の一冊。この人もいろんなところで大絶賛されている人で、いろんなところで大絶賛されるとなぜだかアマノジャクな虫が働くものだで啓して遠ざけるじゃないけどなかなか手を出し難かった作家のひとり(笑) ただ表題作の「混沌ホテル」だけは「リアルト・ホテルにて」のタイトルで以前アンソロジーに収録されたのを読んでました*1

二冊に別れて刊行されるなかでも「ユーモア編」とのことで、どれも楽しい短編SFが5本収録されています。ドタバタ風味ながらもツボを押さえるところはきちんと押さえた「SF」で、恋愛面も含めてハッピーエンドを迎える作品ばかり。気分が落ち込んでるときに読んだら良い薬になるかも知れませんね。

なかでもいちばん気に入ったのは、インチキ霊媒師に取り憑いたホンモノの幽霊とエセオカルトを暴く雑誌記者との掛け合いと、そしてヒロインがすっごくすっごく可愛い「インサイダー疑惑」です。この作品で取り上げられている実在の人物、ヘンリー・ルイス・メンケンについては生憎知識がなかったけれど、無くても十分楽しめますしあとがきにはちゃんと解説されています。基本は「疑うことが仕事」な主人公の前に現れた「奇跡」を、では疑わずに信じるにはどうしたら良いかという葛藤の話でもある。主人公ロブの前に真実は開示され悪人は捕縛され、とってもとっても可愛いヒロイン(なにしろ映画女優なみの美貌だ)キルディとむすばれめでたしめでたし。

めでたしめでたしって陳腐に見えるかも知れませんけれど、実に大事なことなんです。

量子論やオカルト、フェミニズムアメリカ文学そしてファーストコンタクトものと5編の作品はどれも違ったテーマの物語だけれど、根底に共通するのは度を超した自然主義や反知性的な原理への反発・反対で、ちょっと加減を間違えると却って独善的な色合いを帯びてしまいそうなストーリーを、コメディの空気や恋愛要素でソフトにくるんでる、そんな印象を受けました。