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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ウクライナでは民間旅客機が撃墜され、ガザでは地上戦が始まる。国際エイズ学会が今後どうなるのかはまるで未知数だ。

こんなときだから、カート・ヴォネガットの「母なる夜」からの引用文で世の中を生きていくための勇気をひとに分け与えたいと思う。

「愛のためにこそ人は生きているのだと、あなたはもう信じていないのね?」と彼女は言った。
「いないね」とわたしは言った。
「では何のために生きるのか教えて――何でもいいわ」と彼女は哀願するように言った。「なにも愛でなくてもいい。なんでもいいのよ!」彼女は、世界は古道具屋だというわたしの印象を見事に具体化しながら、そのみすぼらしい部屋の中の品々を指して言った。「わたしはあの椅子のためでも、あの絵のためでも、あの煙突、あの長椅子、あの壁の割れ目のためにだって生きるわ!なんのためか教えて、生きるから!」と彼女は叫んだ。
彼女の力ない手が捕えているのは今やわたしだった。彼女は目を閉じて泣いた。「なにも愛のためでなくったっていいわ」と彼女はささやいた。「なんのためかそれだけ教えて」
「レシ――」とわたしは優しく言った。
教えて!」と彼女は言い、彼女の手には力が戻ってきて、わたしの服に優しい暴力を加えた。
「わたしは年寄りだ――」とわたしはなさけなく言った。卑怯者の嘘だった。わたしは年寄りではない。
「わかったわ、おじいさん、何のために生きるか教えて」と彼女は言った。「あなたが何のために生きているか教えて、わたしにも同じことができるように――ここでもいいし、ここから一万キロ離れたところででも生きてゆく!わたしに生きていこうと思わせるために、あなたがなぜ生きていこうと思っているのか教えて!」
この時、手入れの係官が乗り込んできた。

世界は古道具屋だ。勇気と希望を携えて世界を生きよう。