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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

山岸真:編「S-Fマガジン700(海外編)」

SFマガジン創刊700号記念アンソロジー、何かつい最近も記念アンソロジーって出てた気がするが気にするな。12人の作家による12本の短編、いかにも「SFマガジンらしい」作品が集められています。SFマガジンが目指したSF像というか、SFマガジンの読者が期待したSF像というか、まあそのようなものでしょうか。


その12本の中からここではロバート・シェクリイ「危険の報酬」だけに絞って感想を書いてみる。本書収録作品の中では唯一、SF的なガジェットがまったく出てこない作品なのだけれど、そこで扱われているテーマは非常にSF的(あるいはSFマガジン的)だと思うからだ。

SF的なガジェットがまったく出てこないと書いたそばからなんだけど、実は1つだけ出てきます。何かといえばそれはテレビだ。「危険の報酬」は未来の社会でTVのバラエティ番組として製作される殺人ゲームの顛末を描いた作品です。この分野で最も有名なのはシュワルツェネッガー主演で映画にもなったスティーブン・キングバトルランナー」じゃあるまいかと思われますが、手塚治虫の「火の鳥」や近年では「バトルロワイヤル」「ハンガーゲーム」など小説や映像など様々な分野でフォロワーを作り出した、たぶんこれが原点なんだろうね。

余談:実は本作も映画化されています。「バトルランナー」より4年前になぜかフランスで製作され、日本ではずいぶん経ってから「バトルランナー2030」というあんまりヒドいタイトルでVHSビデオソフトが発売されていました。1989年当時90分で一万円もしたんだぜ。*1

ストーリーは殺人ゲームに興じるTV局となにより観客の熱狂ぶりを描くことで未来社会のディストピアぶりをあぶりだす、この手の作品のなにしろキモの部分で出来上がっています。センスがいいなあと思うのは「獲物」としてハンターから逃げ惑う主人公の、単に死亡と殺害をのぞむ観客ばかりではなく「善きサマリア人」として救いの手を差し伸べる視聴者もいること、それも含めた「偽善」ぶりこそディストピアディストピアたる所以に描かれてるところかな。局側のヤラセも混じってるところなど如何にもテレビ番組的で、テレビというガジェットを通じて提供される娯楽向けプログラムが人々を熱狂させ、引いては社会全体を変貌させていく様を描いています。これっていわゆる「意識の変容」というやつで、なるほど嘗てSFマガジン創刊号を飾った傑作だった訳だなあと納得したのです。

そして現代はどうなっているだろう?殺人ゲームこそテレビで流れていないけど、他人の私生活を覗き込んで極端な話その生死の行く末をエンターテインメントとして扱うリアリティーショーの類は、とっくの昔にアメリカでも日本でも放映されている。ヤラセもある。

・・・社会って変容するものですね。

*1:なぜそんなこと知ってるかとゆーと古いホビージャパン誌にレビューが載ってたからです。80年代のHJ誌には本当にお世話になりました