ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

グレアム・グリーン「国境の向こう側」

国境の向こう側 (ハヤカワepi文庫)

国境の向こう側 (ハヤカワepi文庫)

短編集。「純文」などと書いたけどミステリからSF風のものまで収録作の作風は様々に上る。「森で見つけたもの」のような作品まで書いているとは思わなかったのでいささか驚いたが、やはりこのテーマはこの時代の表現者ならば避けて通れないもの、大きく影響を受けるものだったのだろう。日本のアニメやマンガで同種の作品が華開いたのは80年代になってからと認識していますが、初出はいつなんだろうなこれ。

…などと書いたら「それはどんなテーマなんだよ」と誰しも疑問に思うだろうがそこは書かずに済ますのがイジワルとうものである(w

第二次大戦中に英国の片田舎に降下したドイツ空挺部隊がたったひとりの密猟者の手にかかって壊滅する様を描いた「中尉が最後に死んだ――戦史に残らない一九四○年の勝利」や風変わりな防諜任務をコメディ調にまとめた「秘密情報機関の一部局」など軍事行動やスパイ活動を扱った諸作は小品ながらもやはり他に類を見ないような一品で、その辺はさすがの腕前と言うことなのでしょうか。この人の本はまだ全然読んでいないけれど、本書はなかなか面白い一冊でした。

で、「英語放送」がヴォネガットの「母なる夜」とまったく被るテーマ(とはいえ視点の持ち方や話の展開はまるで異なる)であるのが実に興味深い。