ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ニック・ハーカウェイ「世界が終わってしまったあとの世界で」(上)(下)

世界が終わってしまったあとの世界で(上) (ハヤカワ文庫NV)

世界が終わってしまったあとの世界で(上) (ハヤカワ文庫NV)

世界が終わってしまったあとの世界で(下) (ハヤカワ文庫NV)

世界が終わってしまったあとの世界で(下) (ハヤカワ文庫NV)


内容を簡潔に説明するのが難しい小説なのでダラダラとストーリーを書いていく。

「逝ってよし戦争(ゴー・アウェイ・ウォー)」というものが起きて文明が崩壊した未来、変質した地球にわずかに残った人類は大企業ジョーグマンドがパイプラインで供給する物質安定化元素「FOX」の恩恵を受けてかろうじて生存圏を維持していた。そんな社会で幼馴染みのゴンゾーをはじめとする仲間とともにトラブルシューター業をいとなむ主人公“ぼく”のもとにFOXパイプライン火災事故を鎮火させる仕事の依頼が舞い込む。依頼の拒否を求める謎の電話も掛かってくるが、ジョーグマンド社幹部の多大なバックアップを受けて一同は事故現場を目指して一路――

おおマッドマックス(最近リメイクが製作されてるそうですね)風世紀末ヒャッハー・ロードノベルか、と思うじゃない?ところが話の本筋はここから大幅にそれてまだ戦争の起きる前、幼年時代の“ぼく”とゴンゾーとの公園の砂場での出会いから二人で地元の小学校に入り勉強し体を鍛えてカンフー老師からニンジャが襲ってくる話を聞かされ恋をして大学に進んで学生運動に身を投じて逮捕されてニンジャが襲ってきて就職活動が上手くいかずに結局軍隊に入ったら特殊部隊に回されてニンジャが襲ってきたら実は親友のゴンゾーがやっぱり軍の特殊部隊に入ってて…


長いな。


長いよ。


回想パートがちっとも終わらず、やがて見えてくるのは世界を破滅させた「逝ってよし戦争」のきっかけとなったのが、二人の所属する特殊部隊が派遣された中央アジアの破綻国家アディー・カティルの内乱と混乱であること、その地で“ぼく”が派遣看護婦のリーアと出会い結ばれること、アディー・カティルでのいくつかの出会いと、その特殊部隊の生き残りこそが戦後の世界でトラブルシューターを営む仲間であること。その戦争で用いられた「逝ってよし爆弾(ゴーン・アウェイ・ボム)」の影響で世界にはひとの空想を具現化する形で大量のいわゆるミュータントが発生すること。などなどの顛末がなんとまあ下巻の冒頭部分まで延々続いてさあ火事の現場です。ニンジャが襲ってきて“ぼく”もゴンゾーも大ピンチ。でもなんとか切り抜け無事鎮火してうちにかえってきたらマイハニーのリーアはゴンゾーにぞっこん。NTR!?NTRものなの??そんな疑問を問いただしたらゴンゾーはイキナリ「お前は誰だ」と至近距離から銃弾を撃ち込み“ぼく”は砂漠に捨てられ…

と、ここから話は急展開する。それまでてっきりただの長い回想シーン、背景説明だとばかり思っていた記述が実はそうではなく、ゴンゾーと“ぼく”の長く厚い友情とは一体何だったのか、記述の様相が一変する様は面白かった。その後もいろいろあって最終的に“ぼく”はゴンゾーと和解し世界を覆う陰謀を暴いてニンジャを倒すのだけれど、最初はただの冗談だと思われてきた謎の中国拳法流派と悪のニンジャ軍団の長きにわたる戦いの歴史が、実は話の本題だったことにはいちばん驚かされた。ニンジャなら仕方ない。

たいたいそんなはなし。