ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

荒俣宏 編纂「怪奇文学大山脈 II」

シリーズ第二巻、今回は20世紀前半の作品を採録。前書きと巻末の作品解説が非常に大ボリュームで資料的価値が高いのは前巻同様で、大変読み応えのある内容です。作品だけでなくその時代性、同時期に日本ではどのように怪奇文学が甘受されていたかなどいろいろ勉強になる。ハードカバーの豪奢な製本でも良さそうに思いますが、この中身をこれだけの低価格で入手できるのもまた良きことか。戦車プラモより安いぞ実際(w

収録作品の中ではJ・Dベリズフォード(「のど斬り農場」で有名ですね)の「ストリックランドの息子の生涯」が抜群によいです。生まれた子供の幸福を願って頼った様々な占い師、霊媒からの幸せな未来図に信を置けず、遂に自ら水晶球を用いて父親が見出した「地獄」とはなんだったのか・・・というお話。短いながらも最後の一文が実にショッキングで強烈な余韻を残す。

全体に煌びやかな雰囲気を纏いながら極めてグロテスクな結末を迎えるE・L・ホワイト「鼻面」や、一種の馬鹿話ながらもこれってモンティ・パイソンの某有名スケッチのモトネタじゃないかしらと思わされるグスタフ・マイリンク「紫色の死」など傑作揃い踏みでこのシリーズは実にオススメですねえ。