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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

エドモンド・ハミルトン「眠れる人の島」

ようやく読むことが出来た一冊。「反対進化」*1と対になる、ハミルトンの幻想怪奇作品集。河出書房版「フェッセンデンの宇宙」*2と共に中村融編による三部作(?)をようやくコンプリートです。

「フェッセンデンの宇宙」や「反対進化」が奇想SFといわれる変化球じみた作品が多かったのに対して、この「眠れる人の島」は比較的直球だなーという印象。「神々の黄昏」などは記憶喪失の男が実は異世界からやってきた人物で何を隠そう北欧神話アスガルドで剣の神チュール本人で神話の通りにラグナロクを戦うというそのまんまな話だったりする。収録作が5本と少ないこともあって、他の2冊にあったような多才さは若干抑えられているかも知れません。とはいえ、表題作「眠れる人の島」は「すべてがある人物の夢から出来上がっている島」にただ一人漂着した男の、不可思議な体験と奇妙な顛末、そして一抹の物悲しさと十分「奇想」ではあるか。収録作が少ないのは「生命の湖」が短い長編(ショート・ノヴェル)のボリュームを持つ作品だからで、「フェッセンデンの宇宙」刊行の際にはページ数の問題から収録を見送られたいわくつきの一本が読めるのは、やっぱりいいねえ。

でその「生命の湖」も割とベタな秘境冒険ものです。冒険・探検はハミルトンの代表作キャプテン・フューチャーシリーズでも中核を占めるテーマのひとつで、エンターテインメント小説のジャンル分けがまだそれほど明確ではなかった時代の作品として、宇宙SFと辺境ファンタジーが同列に肩を並べていた事を現在に伝えるものかも知れません。「生命の湖」に於ける地球生命誕生の根源を探るメイン・アイデアキャプテン・フューチャーの「脅威!不死密売団」でリメイクされているそうだけど、フューチャーメンならぬ脛に傷をもつならずものばかり集めた探検隊のリーダーがクラークって名前なのもベタっちゃあベタでな。*3

でもね、このベタな秘境探検小説の最後の一節が実にイイ感じで、それがハミルトン作品のよさ、日本での人気につながっているんだなと、改めて再認識。

身を持ち崩し、お尋ね者となった男たち。名誉を失い、辛酸をなめた無法者たち――だが、忠実で、頼りになり、怖れを知らない男たち。彼らは闘って倒れたその地に、世界に忘れられて横たわっている。と、クラーク・スナードの手が曖昧な仕草であがった。それは敬礼でもあり告別の仕草でもあった。
「さらば、仲間たち」と彼は小声でいった。それからマイク・シンがかつてべつの男について述べた言葉を小声でいった。「あんたたちは立派な男だった。たいした野郎どもだった」

ハミルトン作品って根っこの部分は浪花節だよなあとつくづく思ったのでした。
ラストを引用しちゃうのはよくないかも知れませんが、現行入手難なのも確かなので…