ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

西崎憲 編訳「怪奇小説日和 黄金時代傑作選」

怪奇小説日和: 黄金時代傑作選 (ちくま文庫 に 13-2)

怪奇小説日和: 黄金時代傑作選 (ちくま文庫 に 13-2)

元は国書刊行会から3冊本で出ていた短編集を再編したもの。怪奇小説に黄金時代なんてあったのかというのは巻末の解説にいろいろあるけれど、おおむね19世紀から20世紀初頭の作品群と思っておけばオッケーでしょう(その範疇から外れるものも、いくつかありますが)

ウェイクフィールドやレ・ファニュなど、この手の本を読んでいればいつでも出てくる名前がよくみられますが、オブライエン「墓を愛した少年」とベリズフォード「喉切り農場」以外は初読だったので実に実に楽しめました。「喉切り農場」も本書に収録されているものは訳文が瑞々しく、語り手の年齢が若く感じられて面白かった。若くて瑞々しい方が、この話はコワイのだ(笑)

「怪談」って日本では夏の文化だけれど、秋の夜長に怪奇小説をゆっくり時間掛けて読むのも乙なもんです。
様々なタイプの作品があるけれど、どれも共通しているのは「人間が怖い」ってことかなあ。幽霊や亡霊の類、超自然的な存在もあるけれど、やはり恐怖の本質は人間の中にあるのかもしれない。なにしろ人間こそは「未知」の最たるものだからさ。

そのうえで、本書収録作でもっとも怖かったものを一本といわれればジョーン・エイケン「マーマレードの酒」です。怖いぞこれ。