- 作者: ジョナサン・キャロル,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/04/20
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
「蜂の巣にキス」がイマイチだった*1のでその後のキャロルはスルーしていたんだけれど、神保町のブックフェスに「死者の書」でもないかと探していたら、創元のワゴンで200円だったんで代わりに(?)買ってきた一冊。
ひさしぶりに、キャロルらしいお話でした。
ストーリーを説明してもあんまり意味がない(というよりむしろマイナスか)話で、日常がだんだんと不条理に侵食されていく様、主人公がだんだんとその不条理になれていく様、現実と不条理の境界線が消えて一体化する終幕。おもしろいのはそういうところかな。
主人公のマケイブ所長*2は、若い頃は田舎町の札付きのワルだったけど長じて故郷の警察署長になってるひとで、右も左も知り合いばかりな典型的な「アメリカの片田舎」を舞台に、過去と現在が入り乱れ、若い頃の自分と行動を共にしたり未来の世界に送り込まれて自分の死を体感したりといろいろなんだけど、現在の自分と同年代の父親(札付きのワルを息子に持っている好人物)と出会う場面があって、実にそこがいい。「死者の書」も父子を主な題材にしたところがあったし、実にこれがキャロル的なのだなー。大変良いシーンにもかかわらず、
「ビル・クリントンです。ヒラリーという女房と、チェルシーという娘がいます」
なんて偽名を名乗るところで吹き出しちゃったのだけれど。
クレインズ・ヴュー三部作の残りの一冊、「薪の結婚」も読まないといけませんねえ
*1:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20060501
*2:「蜂の巣にキス」にも出てるんだけどすっかり忘れてた