ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ハーラン・エリスン「死の鳥」

 

 ハーラン・エリスンはクールだ。それは初めて「世界の中心で愛を叫んだけもの」を読んだ時、その冒頭に掲げられた「まえがき――リオの波」を読んだ時からずっと変わらない印象で、2番目の作品集となった本書を読んでいる間も、ずっと頭の中から離れない。ハーラン・エリスンはクールだ。

 

クールってなんだろう?少なくとも政府の後押しでテレビ局が金を設けることじゃないよな。ま、なんだろうね。

 

タイトルがどれもこれも格好いいのよ。「『悔い改めよ、ハーレクイン!』とチクタクマンは言った」「竜討つものにまぼろしを」「おれには口がない、それでも俺は叫ぶ」「プリティ・マギー・マネーアイズ」「世界の縁に立つ都市をさまようもの」「死の鳥」ほーらただ並べるだけでも詩情あふれる…

 

なかでもお気に入りなのは「鞭うたれた犬たちのうめき」でしょうか、都市生活者の幸福と恐怖の、ほんのわずかな境目をまあグロテスクに書いたもので、傑作「少年と犬」にも似ている(「少年と犬」にもっとよく似ているのは表題作「死の鳥」のなかの「アーヴー」の章ですね)。

パンチ・カードが読める人なら「俺には口がない、それでも俺は叫ぶ」の内容をより深く知ることが出来るんだろうか?さすがに自分はパンチカードは読めないので…

で、やっぱりこの人ボーイッシュだなと思うのよ。「ジェフティは五つ」に濃厚に示されているように、クールであるということは、それなりにガキ臭いということなんだろうなあ。

 

ひとつ苦言を呈するならば、ハーラン・エリスンの第2作品集として、なんでこの本ここまで刊行が遅れたんでしょう?「世界の中心で愛を叫んだけもの」はオールタイム・ベストにいつも名前が挙がっていたしエヴァやドラマで何度も話題になったのに、2冊目の本書が出るまで40年以上間が空くって異常だよ。収録策自体はどれもその40根近くの間にSFマガジンに発表されたもので、ご丁寧に巻末の作品解題まで当時の物がそのまま掲載されてるんだけれど、これで「読者の渇を癒すべく、この作品集が日本オリジナルで編まれたのである」なんて書いてあんだからさ…

 

渇えさせたのはお前らだ。

 

アンソロジーにはいくつか入ってたんだよな。権利問題なのかなあ?