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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ダン・シモンズ「ウルフェント・バンデローズの指南鼻」

小説・ファンタジー

SFマガジン2016年8月号・10月号に前後編として分載。先日読んだ「天界の眼 切れ者キューゲルの冒険」*1などが属するジャック・ヴァンスによる未来SFとも異世界ファンタジーとも言える一連の世界を描いた「滅びゆく地球」シリーズへの、ダン・シモンズによるオマージュ作品。考えてみるとダン・シモンズ読むのは初めてかも知れないなー。「天界の眼」本編ではあまりにもあんまりな末路になったダーヴェ・コレム公女が、このオマージュ作品で意外な姿で再登場すると同書のあとがきにあったのでバックナンバーを借りてみた。

なるほど出てきた。

三流の小悪党にまんまと騙され貞操を奪われた挙句蛮族に慰み者として差し出された世間知らずの公女は、その後いろいろあってアマゾネス軍団を率いて滅びゆく地球にその名をはせるエロかっこいい女剣士になって帰って来たのだ∩( ・ω・)∩ばんざーい

…ただしオバサンになって⊃( ・ω・)⊃

中村亮による挿絵は本文の記述を忠実に描いているから全然悪くは無いのだが、だがイチャラブなベッドシーンやピロートークがそこそこ頻出するこの作品を、ジジイとオバサンのカップルで読み進めるのは結構な苦痛であるのも確かで、やむなく脳内でオリジナル石黒正数キャラ(何)に変換して読んだことを告白する(w

ストーリーは魔界学者シュルーを主人公に、滅びゆく地球世界の災厄の悪化と魔導師ウルフェント・バンデローズの突然の死、そしてシュルーやダーヴェ・コレムなどの一行によるバンデローズが遺した<究極の図書館>探索。そしてそこに割り込む魔導師フォーセルミの妨害という、王道なクエストの筋立て。10月号掲載分である後半からは飛空ガレオン船による空からの旅路となって俄然エキゾチック感が増します。なにより酒井昭伸による漢字語句を駆使した訳が素晴らしく、往年の傑作「竜を狩る種族」を思わせる…などと思っていたら、後編の末尾には「竜を狩る種族」を訳出した浅倉久志の偉業を称える追悼エッセイが掲載されているのだった。

翻訳に必要なのは語学の力だけじゃなくてセンス、翻訳者本人の基礎教養なんだなってことがよく解る内容でした。やっぱだめだよなっちはな。

朶頤狛とかいて「ダイハク」とルビを振る、シュルーが護衛として使役している魔物のカルドルカ(これは個人名)が非常に良いキャラでした。こういうコトバを考えるのは難しいけれど楽しいことでしょうねえ。
原書はジャック・ヴァンスをオマージュした作品群によるトリビュート・アンソロジーの一編で、のちに単独刊行もされてるそうなんだけど流石に日本でそれは難しいか。できればアンソロジーを丸ごと訳してほしいところで、その際は石黒正数イラストでやってほしいなあ、などと勝手な願望を書いておく(笑)