ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ロジャー・ゼラズニイ「ロードマークス」

ロードマークス (1981年) (サンリオSF文庫)

ロードマークス (1981年) (サンリオSF文庫)

うむ。うううううううむ。「虚ろなる十月の夜に」が良かった*1ので他にも何かゼラズニイをと、神保町のブックフェスティバルでこれを選んだのは、「サンリオSF文庫総解説」*2でもかなりプッシュされていたからであって、実際その世界設定やキャラクターはたしかに面白い、興味深いものではあります。ゼラズニイで道と言ったら「地獄のハイウェイ」が、これはもうある種のフィクションのロールモデルとなるような直球のSFロードノベルだったけれど、この「ロードマークス」はかなりの変化球だったのだな…

時間の流れを一方通行なタイムラインではなく、自由に人々が通行する「道」と捉えて、R66やR20を行き交うような雰囲気で「C二十」や「C十一」を行き交う主人公レッドが、何がしかの理由で「黒の十殺」なる殺人ゲームの標的となり、時間線上に様々な形で現れる殺し屋たちと戦う…ような直球王道では全然なかった(笑)
戦闘サイボーグや元凄腕の殺し屋(らしい)引退僧侶や惑星規模の破壊を引き起こせる戦闘ロボットや巨大戦車に発狂した脳髄を埋め込んだマシーンや何より魅力的なサイボーグ・ティラノサウルスたちが誰一人としてマトモに戦わないというなんかこう、身構え続けてさあいよいよ来るぞ来ましたここからヤマですというその瞬間にいきなり足元すくわれるような、そういう展開の連続です。プロットは複雑に交差して視点も次々入れ替わり、時間軸もけっこうなバラバラ具合なので、決して読み易い構成ではないのはもとより、訳文そのものが古いというか固いので、いまいちノリ辛いところはあるよなーうーむ。

しかし女性の人格を持つナビゲーションAIを一冊の「本」のかたちにして、「悪の華(フラワーズ・オブ・イービル)」と「草の葉(リーブズ・オブ・グラス)」のそれぞれ詩集に話させるというアイデアは確かに秀逸です。願わくば新訳がどこかで出てくれないかなあ。

カバー絵になってる「繭の中からオッサンが出てくる謎シーン」が本編クライマックスを忠実に描写していたのはビビった(w