ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

野田昌宏・編「太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊」

 

太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊 (スペース・オペラ名作選) (創元SF文庫)

太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊 (スペース・オペラ名作選) (創元SF文庫)

 

 1972年にハヤカワSF文庫で刊行された2冊のスペースオペラ・アンソロジーを2013年に創元で合本にしたもの。ハヤカワ版はどちらも10代の時期に読んでるんだけど、さっぱり内容を覚えてなかった(^^; かろうじて「お祖母ちゃんと―」のほうの口絵がヘンリー・ハス「宇宙船上の決闘」から採られたもの(水野良太郎による)だったのは記憶している。

まあ…古いよな、というのが正直な感想である。日本でのスペースオペラ需要というのは基本、昔の物を再評価するかたちで広まった気配があり、野田大元帥が現役で紹介していたころも、伊東岳彦が「宇宙英雄物語」で大胆に導入したときも、そしてこの合本でもすべてみなどこか古めかしく、懐かしいものとして取り上げられる。なにしろ1930年代や40年代の作品が中心で、いちばん新しい作品でさえ1954年初出なので実際古い。ストーリーもキャラクターも類型的というかベタなもので、野田節独特の訳文が無ければそもそも読むのも辛いんじゃないかなと思わなくもない。ジョン&ドロシー・ド・クーシー「夜は千の眼を持つ」で悪漢な船長が場末の(土星の衛星タイタンの場末の)酒場でひと目見た踊り子に懸想してそのまま宇宙船にひっさらって結局指一本触れずに帰してやるという展開は古いというか幼稚さを感じさせてさすがに驚いたんだけれど1949年のモラルならそんなものかなあ。対象読者の年齢はどれぐらいだったんでしょ?手籠めにしたりはしないのよね。だから今でも安心して読めるのかもしれないけどね。

そんな中でもやっぱりエドモンド・ハミルトンキャプテン・フューチャーシリーズ「鉄の神経お許しを」はキャラの立ち具合もストーリーの展開も(その意外性も)群を抜いていて、今でも十分受け入れられる内容でした。古い=駄目ということではもちろんなくて、こうして後年まで朽ちずに残る名作というのもあるわけですね。本書の中ではもうひとつ「お祖母ちゃんと宇宙海賊」が良かった。どちらも1950年代の作品でコメディ色が強い、いわばスペースオペラのパロディとして書かれたフシがあるのは興味深いところです。

 

逆に言えば箸にも棒にもかからなそうないかにもなスぺオペの、その片鱗に21世紀の今でも触れることができるのは貴重ではあるかも知れません。宇宙船の窓ガラスを蹴破って船内に侵入なんて、イマドキなかなかお目にかかれませんよ?ギャグでもパロディでもなく大真面目な作品として、そんなSFもあったのだ…

しかし「太陽系無宿」って別に無宿者の話じゃないんだがまあいいかそんなことは。

むしろこれなんでハヤカワから出なかったんだろう?キャプテン・フューチャーが創元から出た流れからなんで自然ではあるんだけれど、ちょうどそのころからハヤカワのSF文庫のノリというか訳出されるものが変わってきたように思うんだよねーうーむ

 

ヒロインのツンデレ率が異常に高いのは、これはスぺースオペラの特徴なのか当時のアメリカのエンターテインメント全般の傾向なのか、あるいは野田大元帥の趣味なのか、それは全然わかりませんッ><