ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

大森望 日下三蔵編「年刊日本SF傑作選 プロジェクト:シャーロック」

 

 この本をちょうど読もうとしたときに横田順彌氏の訃報を受ける。その業績、後世に与えた影響は限りなく大きい日本SF界の巨星、ご冥福をお祈りします。今巻収録「東京タワーの潜水夫」が遺作ということになるのだろうなあ。これ自体はカミの「ルーフォック・オルモス」シリーズのオマージュというかパスティーシュで、元がホームズ物のパロディ(らしい、未読)で、そこにさらに皿を重ねるものだからそうとう妙な回転をする、ハチャハチャなSFではあった。ではそれが面白かったかと言われるとやー、どうもねーうーむという感じではあり。それに限らず今回はベテラン勢の作品がどうもいまいちというか単に古いというか、どうも合わなかった。その分若手の作品が面白くて小田雅久二の「髪禍」のグロテスクさ、松崎有理「」惑星Xの憂鬱」のほのぼの感、宮内悠介「ディレイ・エフェクト」の喪失から回復に至る流れ、とか、そういうところが良かったなあ。山内悠子「親水性について」はベテラン勢の作品の中ではこれがいちばんお気に入りです。独特で…独特である(2度)

 

そんな中で今回のベストを上げればこれはもう疑いようもなく八島游舷「天駆せよ法勝寺」です。例によってkindle単品売りしてるのね。

 

 「仏教SF」というのもこれが初めてじゃないだろうけど、単語のつくり方、ことばのうまさにとどまらず、小説としてストレートに面白かった。キワモノみたいな印象を受けるかもしれないけれど、極めて真っ当な娯楽作品でした。だからその、巻末解説で「(ある種の)バカSF」って言っちゃうのはどうかなと、思う訳だな。真面目なお話でしょうこれは。