ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

小説・SF

ブレイク・クラウチ 編「フォワード」

フォワード 未来を視る6つのSF (ハヤカワ文庫SF) 作者:ブレイク クラウチ,ベロニカ ロス,N K ジェミシン,エイモア トールズ,ポール トレンブレイ,アンディ ウィアー 早川書房 Amazon SFは必ずしも未来を題材とするものばかりではないけれど、未来を題材…

人間六度「過去を喰らう」

過去を喰らう (I am here) beyond you. 作者:人間六度 一迅社 Amazon さなコン関連で読んでみようと思い、読む。このひとの作品は以前「2084年のSF」で「星の恋バナ」を読んでいて、たいへん面白かった記憶がありました。(長文エントリーに付き注意) aboga…

シーラン・ジェイ・ジャオ「鋼鉄紅女」

鋼鉄紅女 (ハヤカワ文庫SF) 作者:シーラン ジェイ ジャオ 早川書房 Amazon 面白い。面白かった。けれどどこかでモヤモヤした気持ちを抱いてしまうのは自分がジェンダーのこっち側にいるからであって、ジェンダーの向こう側にいる人たちには、これまでこうい…

サラ・ピンスカー「新しい時代への歌」

新しい時代への歌 (竹書房文庫) 作者:サラ・ピンスカー 竹書房 Amazon これは面白い!読み応えある内容だった。ロックミュージックを主題に据えているのでそっち方面かなり疎いのだけれど、ロックの持つ精神性や反権力・自由意識というのは伝わった気がしま…

大森望・編「NOVA 2019年秋号」

NOVA 2019年秋号 (河出文庫) 河出書房新社 Amazon ツイッターでサメサメ言ってたら本書に収録されている田中啓文の「宇宙サメ戦争」を教示いただいて、読む。かなりの濃厚なパロディで偉い人は好き勝手出来ていいなあと思う反面、この芸風をずっと貫いて偉い…

空木春宵「感応グラン=ギニョル」

感応グラン=ギニョル (創元日本SF叢書) 作者:空木 春宵 東京創元社 Amazon エロいものに触れたときにただエロいエロいと言っているとコイツの脳味噌はエロスだらけかと思われそうなので、エロいものに触れたときは「火力!」と叫ぶことにしました。上坂す…

草野原々「大進化どうぶつデスゲーム」/「大絶滅恐竜タイムウォーズ」

大進化どうぶつデスゲーム (ハヤカワ文庫JA) 作者:草野 原々 早川書房 Amazon 大絶滅恐竜タイムウォーズ (ハヤカワ文庫JA) 作者:草野原々 早川書房 Amazon 進化とはデスゲームである。勝者は繁栄し、敗者は絶滅する。万物の根源は未来にあり、そこから「自ら…

ティプトリーJr./ル・グィン他「20世紀SF④ 接続された女」

20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女 (河出文庫) 作者:ティプトリー,ジェイムズ・ジュニア,ル・グィン,アーシュラ・K. 河出書房新社 Amazon 中村融・山岸真編集による年代別傑作アンソロジー第4巻。先日開催された第2回SFカーニバルのイベント「サイバネティ…

大森望・編「NOVA 2023年夏号」

NOVA 2023年夏号 (河出文庫) 河出書房新社 Amazon NOVA初というか日本初の「女性作家だけによるSFアンソロジー」となる今回。前巻の感想はこちらに。今回はもう少し丁寧に1作ごとに見て行こうと思います abogard.hatenadiary.jp ・池澤春菜「あるいは脂肪で…

伊藤典夫・編訳「吸血鬼は夜恋をする」

吸血鬼は夜恋をする: SF&ファンタジイ・ショートショート傑作選 (創元SF文庫) 作者:ヤング、マシスン他 東京創元社 Amazon 当初タイトルからホラーSFの作品集かと思ったけれど実際には副題にもあるように「SF&ファンタジィ・ショートショート傑作選」であ…

神林長平「アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風」

アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風 作者:神林 長平 早川書房 Amazon 我、読めり。 …えっこれじゃダメですか感想としてならこの6文字ですべて言い尽くしてるんですがそうですかダメですか。(・ε・)チェー しかし実際、シリーズ4巻ということで好きな人はもう読んで…

大森望編「ベストSF2022」

ベストSF2022 (竹書房文庫 お 6-3) 竹書房 Amazon 竹書房の短編年間ベストSFアンソロジー第3巻ということで、シリーズ既刊の感想リンクを先に貼っておきます。 abogard.hatenadiary.jp abogard.hatenadiary.jp それでまず苦言を呈しておくと本書の帯には「ま…

デイヴィット・ウェリントン「最後の宇宙飛行士」

最後の宇宙飛行士 (ハヤカワ文庫SF) 作者:デイヴィッド ウェリントン 早川書房 Amazon 正直言っていまひとつだった。あんまりそういうものの感想は書かないことにしているのだけれど、これについては記録しておこうと思う。カバー解説には「名作『宇宙のラン…

クリス・ネヴィル「ベティアンよ帰れ」

ベティアンよ帰れ (ハヤカワ文庫 SF 74) 作者:クリス・ネヴィル 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫SF通巻74という、まあ古典ですね。原著は1970年刊行で、ゼナ・ヘンダースンのピープルシリーズのような「素朴で清貧な古き良きアメリカの片田舎」SFがその年代で…

ガレス・L・パウエル「ガンメタル・ゴースト」

ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫) 作者:ガレス・L・パウエル 東京創元社 Amazon アクアク・マカークのキャラはすごく良い。もともとこのキャラありきで短編を書いてそこからいろいろ転がって長編になったというのも頷ける。巻末にはその短編も掲載され…

柴田勝家「ヒト夜の永い夢」

ヒト夜の永い夢 (ハヤカワ文庫JA) 作者:柴田 勝家 早川書房 Amazon 柴田勝家の長編は初めて読んだな。 ウム、変な話だ。昭和初期を舞台に実在の人物を多数配して幻想的な世界を小説で描くというのはどうやったって「帝都物語」になりそうなものだけれど、「…

十三不塔「ヴィンダウス・エンジン」

ヴィンダウス・エンジン (ハヤカワ文庫JA) 作者:十三 不塔 早川書房 Amazon 第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。韓国人の青年男性を主人公に近未来の中国・成都を舞台に描くアクションという構成に、攻めてるなあと感じる。しかしそれを「攻めてる」と…

乾緑郎「機巧のイヴ 帝都浪漫篇」

機巧のイヴ―帝都浪漫篇―(新潮文庫) 作者:乾緑郎 新潮社 Amazon 「機巧のイヴ」シリーズ三部作の完結編、らしい。第1作*1、2作*2に引き続いてなのだけれどずいぶん間を開けてしまって、おまけに以前NOVAで読んだ番外編というのが実はこの第3作のその後を描…

大森望編「ベストSF2020」

べストSF2020 (竹書房文庫) 竹書房 Amazon 2021年版*1に引き続きというか遡ってか、こっちも読んでみる。シリーズ開始ということで意気込みは強く感じられ、あとがきにゴシップめいた話を書いちゃうところとか鼻白むところも無くはない(笑)2冊読んで気がつ…

大森望編「ベストSF2021」

ベストSF2021 (竹書房文庫, お6-2) (竹書房文庫 お 6-2) 作者:大森 望 竹書房 Amazon 竹書房文庫のこのシリーズに手を出してみる。やや躊躇っていたのは大森・日下コンビの東京創元社年刊日本SF傑作選読んでた頃に、どうも自分に合わない作品は大森選なんじ…

SFマガジン2022年10月号

SFマガジン 2022年 10 月号 早川書房 Amazon 「スタジオぬえ」という名前を知ったのは「プラレス3四郎」で成田シノグの本棚に何かそういうタイトルの本があって…などといきなり古い話をしてみる。スタジオぬえ創立50周年記念特集というのはいろいろと意義深…

ヘンリー・カットナー「ロボットには尻尾がない」

ロボットには尻尾がない 〈ギャロウェイ・ギャラガー〉シリーズ短篇集 (竹書房文庫 か 18-1) 作者:ヘンリー・カットナー 竹書房 Amazon 完全にタイトルと装丁だけに惹かれて読み始めて、そもそも何時だれか書いたものなんだ…というのは後から確認したらヘン…

宮澤伊織「神々の歩法」

神々の歩法 (創元日本SF叢書) 作者:宮澤 伊織 東京創元社 Amazon 以前創元SF短編賞を取った作品を連作・単行本化したもの。表題作については『折り紙衛星の伝説」*1で読んでた。が、「ベタな内容だ」とあるだけでほとんど覚えていなかった…。再読してまあ…

C・L・ムーア「大宇宙の魔女」

大宇宙の魔女: ノースウェスト・スミス全短編 (創元SF文庫 ム 1-1) 作者:C・L・ムーア 東京創元社 Amazon 以前はハヤカワSF文庫で3冊出ていたスペースオペラ、ノースウエスト・スミスシリーズを一巻本にまとめて創元から刊行されたもの…なんだけど、2008年に…

サラ・ピンスカー「いずれすべては海の中に」

いずれすべては海の中に (竹書房文庫) 作者:サラ・ピンスカー 竹書房 Amazon いろいろと高評価を見て手に取ってみた一冊…なんだけど、残念ながら自分にはあまり合わなかったなあ。ま、そういうこともあるのが本読みです。10年前なら河出の奇想コレクションで…

北野勇作「100文字SF」

100文字SF (ハヤカワ文庫JA) 作者:北野 勇作 早川書房 Amazon 例によってamazonが張り付けるのは電書リンクなんだけれど、例のごとくに読んだのは紙本です。これは結構大事なことで、初出は著者がツイッターの専用アカウントで発表していた作品をまとめた…

伊藤典夫訳・高橋良平編「伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触」

伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触 (ハヤカワ文庫SF) 作者:マレイ・ラインスター,ジョン・ウインダム,ジェイムズ・ブリッシュ,フィリップ・ホセ・ファーマー,ジェイムズ・ホワイト,デーモン・ナイト,ポール・アンダースン 早川書房 Amazon 伊藤典夫翻訳SF傑作…

ザミャーチン「われら」

われら (光文社古典新訳文庫) 作者:ザミャーチン 光文社 Amazon オーウェルの「一九八四年」に強く影響した作品だという話をアフターシックスジャンクションのロシア・ウクライナ文学回(まー池澤春菜ゲスト回だ)で聴き、読んでみる。 めっちゃ読み辛い話で…

日本SF作家クラブ 編「2084年のSF」

2084年のSF (ハヤカワ文庫JA) 作者:日本SF作家クラブ編 早川書房 Amazon 「ポストコロナのSF」*1に続く日本SF作家クラブ編集によるアンソロジー。前回よりは書き手が若いというか新鋭なのかな?現在から62年先の未来ってまた微妙な近未来ですけど、オー…

樋口恭介編「異常論文」

異常論文 (ハヤカワ文庫JA) 早川書房 Amazon SFマガジン2021年6月号特集をボリュームアップし、ハヤカワ文庫JA通巻1500冊記念として文庫化された話題作。ひとことで言うと、 異常だ。 まあその、読んだというか読みはしたというか目は通したというか。変な本…