太平洋戦争の日本軍防御陣地―1941‐1945 (オスプレイ・ミリタリー・シリーズ―世界の築城と要塞イラストレイテッド)
- 作者: ゴードン・L.ロトマン,Gordon L. Rottman,Ian Palmer,齋木伸生
- 出版社/メーカー: 大日本絵画
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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オスプレイ・ミリタリーシリーズの「世界の築城と城塞イラストレイテッド」第一弾。タイトルが全てを説明しているような気がしなくもない、旧日本陸海軍の島嶼地域における防衛陣地の解説。基本的には野戦築城陣地でいわゆる恒久要塞地帯ではない*1、というのも太平洋戦争の南方地域というのは開戦後に占領し、そこから初めて防衛計画を構築せざるを得なかったからである。島というのは攻めるに易く守るに難いものだ。
急造とはいえ効果がなかったのかと言えばそういう訳でもない。戦争後半、米軍の上陸作戦が始まると、米軍はほとんど島ごとに新たな兵器を投入して日本軍を驚愕させたそうだが、日本軍は日本軍でほとんど島ごとに新たな防御方法を構築していて米軍を驚愕させたらしい*2
この手の機銃座やトーチカが具体的にどうだったのかを纏めた資料ってちょっと思いつかなくて、貴重だと思う。なにしろ作った人や中の人が大抵死んじまってるんで記録が残って無さそうだからだ。本書も基本的には戦闘後の米軍による調査記録が主体なので写真はどれもぶっ飛ばされたあとのものばかりである…
島というものはそれがどれほど強固に防衛されていようと周囲の制空権・制海権を取られてしまうと実質孤立化した包囲陣に過ぎない。硫黄島、ペリリュー島、ビアク島など少数の日本軍が頑強に抵抗した例は少なからず存在するが結局どこでも敗北し占領される。投入されたリソースは「無駄」に失われる。かといってそれが「無意味」ではなく、戦力も兵力も無く無防備の無人地帯のままで済ませる訳にはいかなかったのが軍隊と戦争のロジックなんだろうなと、思う。
このシリーズ次は二次大戦のドイツ軍で「高射砲塔」とか出てくるらしい、ちょっとわくわくしている*3
*1:そっち方面は学研の「日本の要塞―忘れられた帝国の城塞 (歴史群像シリーズ―日本の戦争遺跡)」が詳しい
*2:土木技術そのものは欧米に比して低く、また築城地域の特色によって陣地の強度は低下したそうだが
*3:でもネタ切れするのは早そうだ…