スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
- 作者: アントニー・ビーヴァー,堀たほ子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2005/07/15
- メディア: 文庫
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スターリングラードの戦い、といえば世界史の教科書にも載っている事柄なので、第二次世界大戦に興味のないひとでも知っていることの一つだと思う。これまで色々な本で触れられていたが一冊まとまったものを読むのは考えてみれば初めてだ。
近年ジュード・ロウ主演で映画化されたがこれが軍オタには不評で(笑)
10年ほど前だったかドイツ人監督が撮影したいわゆる「ドイツ版」とよばれているもののほうがウケが良くて*1、「リアルだ」とか言われている。
本書を読んで思ったことは「どっちの映画も現実とは程遠い」である。
旧ソ連崩壊後に明かになった新資料や、丹念な取材に基づく手記や手紙の引用などから、これまで知らなかったような事実がもう、ゴロゴロ。
とりあえずいちばん驚愕したこと。
スターリングラード戦と言えば補給が途切れて苦しむドイツ軍、というのが一般的なイメージだがジリ貧だったのはソ連軍も同じでウラノス作戦*2途上、
北部側面にいて、食料がなく飢え死にしかけていた彼の大隊はルーマニア軍の補給所を占領した。あげくに150名が「食べ過ぎ」で死んだ。
なにやってるんだ、ロシア人。
他にも女子学生だけで編成された「リアル鋼鉄の少女たち」みたいな高射砲部隊がドイツ戦車部隊と果敢に撃ち合い、当然のように殲滅された*3りとかネタになりそうな話が満載だ。ドイツ側でも防空壕の中にグランドピアノ持ち込んで空襲中ずっと弾き続けていた将校とかステキに狂気の沙汰。
上記ジュード・ロウ版映画の元ネタ、ヴァシリ・ザイツェフのエピソードも当然描かれている。なにしろ実在の人物ですから。しかしどうもドイツ軍がザイツェフを仕留めるために狙撃兵学校の教官を送り込んだという話は眉唾らしいと記されているのであった・・・
パウルス元帥のひととなりというのも初めて読んだ。やっぱりロンメル元帥とは対照的な性格・対照的な用兵なんだなー。もっとも、仮にパウルスが冬の嵐作戦*4に呼応して突破を図ったとしても既に疲弊した兵士達では到底不可能であり、やはり戦略の行く末は個人の資質が問われるものでは無いのかも知れない。
知ってるようでも知らないことは多々あり、非常に面白かった。