- 作者: 大内建二
- 出版社/メーカー: 光人社
- 発売日: 2006/06
- メディア: 文庫
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光人社NF文庫で精力的に輸送船舶の本を書いている著者の新作。珍しく英語で副題があって「THE FIGHTING MERCHANT SHIPS AND FISHING SHIPS」という。今丁度第二次大戦に於ける「武装漁船」というものに興味があるので買ってみた。が、漁船については一章が割かれたのみでそれもドゥリットル爆撃隊を発見した第二十三日東丸というこの分野ではもっとも有名な話だったのでその点はちょっと残念。一連の著作では日本のみならずイギリスに於ける輸送船舶についても詳しいので、北海やバルト海での武装漁船の話がないかと期待していたのだが…
とはいえ、第二次大戦での知られざるエピソード集としては逸品であることに間違いはない。ガダルカナル島やレイテ島への上陸作戦であたら輸送船が次々に撃沈された…とは聞いていても、実態はどうだったのか。戦争末期に南方から奇跡的に無傷で日本本土にたどり着いた油槽船があった…とは聞いていても、それはどんな航海だったのか。通常の戦記ならば書き流してしまうようなエピソードの数々を丹念に拾っている。
豪華客船クイーン・メリーとクイーン・エリザベスの兵員輸送船としての運行状況には驚愕せざるを得ない。駆逐艦の最大戦速にひけを取らないスピードで巡航し軽巡洋艦なみの武装を持ち、そこらの兵員輸送船とは桁外れの人数をしかも快適に(ここ重要です)運搬できる。これは連合軍の輸送船でもピンもピンだが、著者の「輸送船入門―日英戦時輸送船ロジスティックスの戦い (光人社NF文庫)」などで示されている「日本軍の輸送船はナチスドイツの強制収容所以下の状態」という事実を知っていると驚くどころの騒ぎではないだろう…
いやもう、太平洋戦争ってどこを切っても悲惨な話には枚挙に暇がない。まるで本を読む時間は作れても読書日記を書く時間がない生活のようだOTL