八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学 ちくま新書 (544)
- 作者: 佐藤卓己
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/07/06
- メディア: 新書
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去年いろいろ話題になったのに乗り遅れ、口惜しくて一年間読むのを待った一冊(笑)
副題通りこれはメディア関連書で、ラジオや新聞、テレビなどがどういう課程で「八月十五日」というものを終戦のシンボルと位置づけてきたかの分析である*1
文化・軍事・国内外の政治さらには教科書問題と多岐に渡った記述はそれだけでも十分読むに楽しい文章である。読了して思ったのは普段我々が確と信じていることが、実はどれほどあやふやで不確かな物の上に成り立っているか、だ。昭和二十年八月十四日から九月二日までの二週間という次期は、相当不確かな次期である。ソビエト連邦が八月十五日以降北千島や樺太、満州に侵攻したこと、宇垣纏中将が玉音放送後に特攻出撃を強行したこと、漠然と――尚かつ心のどこかでは確と――「悪」あるいは「間違い」と思っていたことを早々簡単には位置づけられない気分になった。降伏文書が締結されるまでは精々「休戦」もしくは「停戦」期間であるし、陸海軍として正式な停戦命令が下ったのは明けて八月十六日になってからのことである*2。つまるところ昭和二十年八月十五日というのは気分あるいは「ムード」の問題なのかも知れない。
それでもまあ、良いかなと思う。自分の使っているカレンダーにも8月15日には「終戦記念日」の記述がされている。しかしそれは「国民の休日」ではない。何故か?
その日は「お盆」だからである。盆踊りや夏の甲子園などの年中行事が終戦記念日と関連づけられて語られる様も、実に読んでいて楽しく、ある意味興奮する。