ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

熊谷直「帝国陸海軍の基礎知識」

帝国陸海軍の基礎知識―日本の軍隊徹底研究 (光人社NF文庫)

帝国陸海軍の基礎知識―日本の軍隊徹底研究 (光人社NF文庫)

基礎知識ってなんだろう?と思い手に取ったら軍隊内の人事・階級や給与・教育など制度面の話だった。なるほど基礎だが応用を利かせるのは難しそうだ(苦笑)
ただ、この類のシステムにのみ話を絞った本も少ないとは思うし*1文庫で手軽に読めるのはよいかと。内容はまあ、堅い話なんだけれども編年的に制度の沿革を記述しているので、明治時代の軍組織やエピソードは新鮮な読後感を得た。

明治三年に(略)フランスからサーベルの教官もやってきた。このとき日本式の剣術で立ち会ってみて、フランス教官のあまりの弱さに驚き、以後、剣術は日本式になったという話がある。

本書一番の笑い所。最高にツボw

軍隊というのは巨大な官僚機構だとよく言われる。それは実際その通りで武官文官と呼ばれるように個々人は「官」である。明治憲法下の立憲君主制度に於いて職業軍人と徴兵とはそのレゾンデートルに明確な違いがあり、自分はその辺りの事情に全く疎いので大変勉強になった*2

余談だが階級が違えば当然給与も違うものであり、フィクション上で時折見かける「戦死者に二階級特進という肩書きだけを与える非人間的な軍隊」というパターンはいささか誤解で、それは実は遺族年金の加給という意味があったりもする。

直接何かに役立つということはちょっと考えつかないが、面白い一冊ではある。

*1:陸軍大学や参謀本部などはなにか新書で有ったように思う

*2:将官/佐官・尉官の将校/下士官はそれぞれ勅任官/奏任官/判任官という位階上の資格を持っているが上等兵以下は「卒」である。卒という存在は官僚ではない。