- 作者: 菅浩江
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09/21
- メディア: 文庫
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前から気になってた一冊。いやタイトルがタイトルだけに(笑)
なんでも10年以上前に出てた短編集に一編加えた新装版なのだそうで、個人的にこのような出版形態はあんまり好きじゃないのだけれど未読だったのでまあ良しとするか。ロボット物、と言って良いのかな?中にはクローン人間ものもいくつかあるけれど、マニピュレイトされて生まれたヒトガタと乱暴にくくってしまえばロボット物と言って差し支えはあるまい。とはいえこんな言質は将来クローン技術が実用化されたら差別的な発言になるのだろうな*1
SF小説に限らず、昔から人はヒトガタにいろんなものを託してきたのだなーと思わされる。なんだろうな宗教とか信仰とかヒューマニストとかあるだろうけれど、本質的には共感とか願望とか同一性と異質性の問題かな???
初出十年以上前とは言っても表題作はイマドキのガジェットをよく昇華し、且つ上品な小説にしていると思う。本当に同時代的なら大量生産の完成品とか限定版とかキャストオフとか下世話なネタになりそうな気もするが(苦笑)
「うーん、インジェクションキット並みに細かいところまでよく抜けてる。おー、逆テーパーもばっちり。ウエスト部分で上下分割ってのも、ポーズ改造趣味を満足させるマニアックなパーツ割りと言えましょう、うんうん」
サンドペーパーで擦り、シンナー臭いサーフェーサーを塗り、また磨く。ペーパーの番数が上がる……つまり目が細かくなるに従って、粉は煙のように舞い上がって中国語の教科書の上にうっすら積もった。
「……で翼の部分も真鍮線補強しなくて済んだ。でこぼこ(エンボス)加工がいいよ。ドライブラシでハイライト入れたらずいぶん面白くなった。本当はパールかけたかったんだけど、いつも使ってるやつでいいのかどうか判らなかったんだ」
…なんか、なんかすげー楽しい(笑)でもこういう「ガレージキット」を作る文化って急速に失われてるよね。
余談。主人公が参考にする模型雑誌が「ホビージャーナルEX」略してHJEXだったのにはいろいろと遠い目になった…
*1:京大の万能細胞のおかげでクローン羊「ドリー」の研究者はその道を諦めるそうだが