- 作者: カート,Jr.ヴォネガット,伊藤典夫,浅倉久志,吉田誠一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1989/03
- メディア: 文庫
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短編集、復刊してましたのでとりあえず一冊目。例によってハヤカワSF文庫なんだがSF小説らしくはない。実際ヴォネガット自身「SF作家」と呼ばれるには抵抗があったそうだが、エド・マクベインだって「私はミステリー作家ではない」とか言ってたりするのだ*1
。ヴォネガットが短編小説を書いていたのはまだ駆け出しのころで(いや長編作中にもやたらと入っているが)、掲載されていたのもいわゆる「一般誌」が多くてその、なんだろうそれほどアクの強くないものが多いと感じる。らしくない、と言ってもいいだろう。アジアの某共産主義国家に不時着した米軍人が独裁者に強制され部下家族と共に「人間チェス」をやらされる『王様の馬がみんな……』などは大変珍しい作品でなんと悪人が出てくる。愚かな人間は綺羅星のように出てくるのに、悪い人間は月面の酸素並みに皆無だというのが特徴なのに!いやビックリした、さっぱり憶えていなかったw
ごく普通の、ティーンエイジ的恋愛小説なんかもあったりして微笑ましいのである。まえがきによれば「やがて妻となる女性と過ごしたある午後のことを書いたもの」である『永遠への長い道』*2などはもうメロメロ(死語)一週間後に結婚を控えた女性の下へ、陸軍に入隊していた幼馴染が突然現れ無許可離隊して愛を告げに来てお散歩しながらちゅーしてうはwプラトニックwwラヴwwww
初読当時は気が付かなかったんだけど「ドレスデン空襲は人間を変えるものだなァ」とか思った。あとこの奥さんって後に娘とともに新興宗教に傾倒して離婚しちゃうんだよなーなどと俺の中の全米が泣いた。
もし人類社会の99%はクソだ!なんて言ってるひとがいたら残りの1%はクソじゃないとわかってラッキーですね!!と言いたくなるような、まあそんなところなのです。