ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

フレドリック・ブラウン「さあ、気ちがいになりなさい」

原題を「Come and Go Mad」といい、なんとも惹きつけられるタイトルである(笑)思えばブラウンの代表作には気ちがい要素が随分含まれていて「火星人ゴーホームasin:4150102139は地球上の全人類が気ちがいじみた幻覚を見る話だったし、「発狂した宇宙」asin:4150102228はあらゆる次元に属する全宇宙が気ちがいになる話だった。

そしてブラウンの作品はどれも優しい話だった。上記の二作品はどれも優しさに溢れていて、自分は時々発狂した宇宙に行ってみたくなったりもする。いや本当にw

短編集表題作「さあ、気ちがいになりなさい」も優しいストーリーだった。ごく普通の男が気ちがいを装って精神病院を訪れるがこの男実は本当に気ちがいで、本人は至って正常なのだが周囲に気ちがいだと思われてるという不安に襲われ、精神科医の診断を受けている間に気ちがいだと思っている周囲の方が間違っていて、全くもって当人は正常であり、内心思っていたとおり実際に○○○○○だった――が、結局気ちがいに成り、一般社会で平和な人生を送るというハートウォーミングな…どーでもいーがこんなに気ちがい気ちがいと連呼するといろいろマズいんじゃないかと不安になるなあ。

採録されている中で、一見すると壮大な遠未来史のように見えたものが実は違います!な「不死鳥への手紙」と

「地球上で最後に残った男が、ただひとり部屋のなかにすわっていた。すると、ドアにノックの音が……」

などとまるでホラー小説のようなセンテンスがじんわり優しい「ノック」のふたつはお気に入り。これ昔創元の短編集で読んだんだよなー。特に「ノック」の方はこのセンテンスだけ記憶してて誰のなんと言う作品だかは失念してたので今回良い収穫になった。