ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ダフネ・デュ・モーリア「鳥―デュ・モーリア傑作集」

鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)

鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)

そろそろ誰か「奇妙な味わい」小説にフレッシュでキャッチーなジャンル名をつけてくれないかと思わされる不思議な、不可解な作品集。表題作はヒッチコックの映画としてあまりに有名で、原作はまったく違う味わいなのである。映画では「逃亡」で終わったラストが原作では閉塞状況として幕を閉じ、家族が自宅に閉じ込められていく様子はまるで「風が吹くときasin:4751519719のようだ。そしてやはり「何故そうなったのか」に明確な答えは見出されない。

「不安」ってそれだけでエンターテインメントになるのかな?比較的長めの作品が多い短編集で、総じてどれも不安を煽られるような、かといって恐怖だけでもない、そんな感覚を憶える。中でも「モンテ・ヴェリタ」が良かった。山中に立つ修道院、呼び寄せられる女達、謎めいた巫女。何かが起きて、しかしそれが何だったのか、何故なのか、何一つ解明されず、ただ友情だけが残る。これは素晴らしいな…