ソビエト・ロシア戦車王国の系譜―Tー54/55 Tー62 Tー64 Tー72 Tー (KANTOSHA MOOK)
- 作者: 古是三春
- 出版社/メーカー: 酣燈社
- 発売日: 2009/04
- メディア: ムック
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まずは冷戦時代のお笑いを一席。話はそれからで。
神の見えざる手
・1776年、アダム・スミスが「国富論」で示した理論。
西側では資本主義経済の自動均衡能力の事を指す。
・ソ連ではウクライナから送られた100トンの小麦が、
モスクワに着くと何故か1トンになっているような状態を指す。
――PVO刊行、私家発行版地下文書*1「悪意の事典」より
先日携帯電話を機種変更しようかと街を歩いていろいろ見て回っていたら、知らないうちに財布が軽くなりカバンが重くなり、気がつけばこの本が入っていたのである。
)、._人_人__,.イ.、._人_人_人 <´ 天狗じゃ、天狗の仕業じゃ! > ⌒ v'⌒ヽr -、_ ,r v'⌒ヽr ' ⌒ // // ///:: < _,ノ`' 、ヽ、_ ノ ;;;ヽ // ///// /:::: (y○')`ヽ) ( ´(y○') ;;| / // //,|::: ( ( / ヽ) )+ ;| / / // |::: + ) )|~ ̄ ̄~.|( ( ;;;|// //// /// :|:: ( (||||! i: |||! !| |) ) ;;;|// /// ////|:::: + U | |||| !! !!||| :U ;;; ;;;| /// ////|::::: | |!!||l ll|| !! !!| | ;;;;;;| //// // / ヽ::::: | ! || | ||!!| ;;;;;;/// // // // ゝ:::::::: : | `ー----−' |__////
まあまあ、天狗など近代以前の迷信的産物なので、きっとこれはCIAの陰謀ですよ。
第二次大戦以降のソビエト・ロシア陸軍主力戦車の開発・発展をT-44からT-90に至る各車種別に解説した一冊。概略的には知っていても、纏めた一冊が手元に在れば色々と便利で為になる。細々とした箇所では新たな知見も得られる事だし、またこれから「殉教者のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく」T-72神のうら若き信徒方々には必携の書となるかも知れない。
だからこそ、図版の扱い方が雑*2なことは気に掛かる。末尾にわざわざ全車の側面図を(各車解説の物と同じ図版を)まとめているのに縮尺が合っていない事など、もう少し気をつかっていれば良いのになあと、これは多分編集側の問題だろうが。しかし全体を通して見れば、旧ソ連時代のプロパガンダ臭あふれる写真がクリアーな大判でいくつも掲載され、実にノスタルジックな気分に浸れるものである。ああ、T-64の禍々しさよ初期型T-72の初々しさよ。ソ連製125ミリ戦車砲の徹甲弾はレッド・ミラージュの装甲に1ミリもの傷を付けられるんだぜ!!
思えば人とは思春期に様々な意識の変革・変転を迫られるものである。殊更自分に於いては矢張り1991年に起きた湾岸戦争が衝撃であった。それまでは鉄のカーテンの向こうに座し、666の666倍以上の数で生まれて育ちて地に満ち足りた無敵の集団と思われていたソビエト連邦地上軍機甲師団の、その尖兵が多国籍軍相手に全く以て太刀打ちできず、野辺に骸を曝していたその時に、自らの身を以て信じていた神話は砂のように流れて消えた。
主よ、主よ、何処に行かれるのですか。
後年になって「あれは輸出仕様の廉価版戦車だった」「複合装甲がただの鋼鉄」「徹甲弾芯もただの鉄」「イラク陸軍の練度はモンキーモデルで戦略は猿並みに低かった」「戦争は数だよ兄貴」などと言われても、一度失われた信仰心を取り戻すことは難しい。コンタクト−5装甲がAPFSDS弾にも効力を発揮するとされ作動原理を説明されても、やっぱり外付けのERAが必要な砲塔がDUに抗堪し得るのか、「アレナ」や「ドロズド」は言われているほど有効に作用するのか、疑いの目で見ずにはいられぬ。何しろ人類の歴史に於いて、ロシア人を信用して酷い目に遭った者のリストはそれはそれは果てしなく続くのだから。
それでも尚、パンドラの箱の底に最後に残されたもの、口に出すのを躊躇う程に青臭く甘酸っぱく、何より苦くて辛い代物を、我々は捨て去ることが出来ずに居るのだ。まったき闇夜にほのかに灯される小さなかがり火は――
その名をチョルーヌイ・オリョール(漆黒の鷲)というのだ。
……いやまてオムスク輸送機械はとっくに倒産してて次世代車輌の本命はT-95の方じゃなかったのか。そういう所まで踏み込んで叙述されてたら良かったのになー
余談。
この条約*3で解体されスクラップ化された戦車の残骸は、再生鋼材として日本のある企業が大量購入したことが知られる。購入されたソ連戦車の残骸の多くは、自動車ボディに姿を変えたはずだ。
Σ( ̄□ ̄lll)!!
そこの貴方、貴方がいま一律千円の利用料金で日本の地方高速道路を驀進させてる自動車は、世が世ならフルダ渓谷を突破して西欧諸国を蹂躙していた打撃群の、成れの果てかも知れないのですぜ…
嗚呼、いまはただ祈りなさい。オブイェークト(胸にTの字を切る)